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摩擦(まさつ、英: friction)とは、固体表面が互いに接しているとき、それらの間に相対運動を妨げる力(摩擦力)がはたらく現象をいう。
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物体が相対的に静止している場合の静止摩擦と、運動を行っている場合の動摩擦に分けられる。多くの状況では、摩擦力の強さは接触面の面積や運動速度によらず、荷重のみで決まる。この経験則はアモントン=クーロンの法則と呼ばれ、初等的な物理教育の一部となっている[2]。
摩擦力は様々な場所で有用なはたらきをしている。ボルトや釘が抜けないのも、結び目や織物がほどけないのも摩擦の作用である[3]。自動車や列車の車輪が駆動力を得るのも地面との間にはたらく摩擦力(トラクション)の作用である[4]:6,55。産業上は物理的な機械の回転、摺動機構の効率に影響を与える。
摩擦力は基本的な相互作用ではなく、多くの要因が関わっている。巨視的な物体間の摩擦は、物体表面の微細な突出部(アスペリティ)がもう一方の表面と接することによって起きる。接触部では、界面凝着、表面粗さ、表面の変形、表面状態(汚れ、吸着分子層、酸化層)が複合的に作用する。これらの相互作用が複雑であるため、第一原理から摩擦を計算することは非現実的であり、実証研究的な研究手法が取られる。
動摩擦には相対運動の種類によって滑り摩擦と転がり摩擦の区別があり、一般に前者の方が後者より大きな摩擦力を生む。また、摩擦面が流体(潤滑剤)を介して接している場合を潤滑摩擦といい[5][6][7]、流体がない場合を乾燥摩擦という。一般に潤滑によって摩擦や摩耗は低減される。そのほか、流体内で運動する物体が受けるせん断抵抗(粘性)を流体摩擦もしくは摩擦抵抗ということがあり、また固体が変形を受けるとき内部の構成要素間にはたらく抵抗を内部摩擦というが、固体界面以外で起きる現象は摩擦の概念の拡張であり[8][9]:3、本項の主題からは離れる。
摩擦力は非保存力である。すなわち、摩擦力に抗して行う仕事は運動経路に依存する。そのような場合には、必ず運動エネルギーの一部が熱エネルギーに変換され、力学的エネルギーとしては失われる。たとえば木切れをこすり合わせて火を起こすような場合にこの性質が顕著な役割を果たす。流体摩擦(粘性)を受ける液体の攪拌など、摩擦が介在する運動では一般に熱が発生する。摩擦熱以外にも、多くのタイプの摩擦では摩耗という重要な現象がともなう。摩耗は機械の性能劣化や損傷の原因となる。摩擦や摩耗はトライボロジーという科学の分野の一領域である。
「摩擦 (friction)」という語を初めて文献中で用いたのはアイザック・ニュートンだとされる[10]:2。しかし、アリストテレスを始めとする古代ギリシャ人や、ウィトルウィウス、大プリニウスらは早くから摩擦の原因や緩和法に興味を持っていた[11]。このころすでに静止摩擦と動摩擦の違いは知られていた。テミスティオスは350年に「動いている物体の運動をさらに強める方が、静止している物体を動かすより易しい」と記している[11][12][13][14]。
1493年、トライボロジーのパイオニアであったレオナルド・ダ・ヴィンチにより、滑り摩擦に関する古典的な法則が発見された。それらは私的な記録に残されたのみだったが[15][16][17][18][19]、ギョーム・アモントンによって1699年に再発見され、後に摩擦の基本法則(アモントン=クーロンの法則)の一部とみなされるようになった。アモントンは摩擦が生じる理由として、物体表面の微小な凹凸がかみ合うことで相対運動を妨げるという凹凸説(roughness theory)を示した[10]。この見方はのちにベルナール・フォレスト・ド・ベリドール(英語版)[20]とレオンハルト・オイラーによって深化