理解・言語の本質

理解とは

色々な説があるかと思いますが、ここでは現実を分けること、とします。 同じであるものは同じものとして、違うものは違うとして分けます。 例えばフルーツがたくさんあった場合に、リンゴはリンゴのかご、オレンジはオレンジのかご、といった具合にです。

りんごとグレープとオレンジ

よく、理(ことわり)、事割りなどと言われますが恐らくそういうニュアンスだと思います。 これは日本に限らず西洋でも、scienceはラテン語のscire(知る)から来ていますが、似たような単語でscindereというものがあります、 これは分ける、切り裂くという意味で英語で言うとscissor(ハサミ)につながってきます。 洋の東西に問わず、分けることと分かる(知る)ことは近しい単語で表現されます。 薀蓄はこれくらいにして、更に「同じとする観点」を示せると完璧です。 例えば赤リンゴ、青りんご、さくらんぼがあった場合に例えば といった二つの分け方があります。 第一の場合はフルーツ種が同じか否か、第二の場合は色が同じか否か、 という観点です。 このように、同じものは同じもの、違うものは違うものを分けつつ、 そのように分けた観点をきちんと説明できること、これが「事物を理解すること」とします。 そこまでズレた定義では無いかと思います。先に進みます。

言語とは

現実を記号化したものです。つまり一対一対応しているのが普通です。 りんごカラー

この画像には、15個のリンゴが整然と並んでいます。リンゴの色は主に緑色と赤色の2種類で構成されています。緑色のリンゴが多数を占め、合計で9個あります。一方、赤色のリンゴは6個だけ並んでいます。前方から4列に並んでいます。1列目には左から緑色のリンゴ、赤色のリンゴ、緑色のリンゴが2個の合計4個があります。2列目は緑色のリンゴが3個あります。3列目は赤色のリンゴが4個あります。4列目は左から緑色のリンゴが2個、赤色のリンゴ、緑色のリンゴの合計4個があります。

そうなると、同じことは同じもの、違うものは違うもの、このように分けられた現実を言語でどう表現するかが気になります。

同じものの記号化

これは単純に同じものは「同じ単語」で示されることになります。 ちょっと長いですが以下の例文を見てみてください。一度登場した人物はそれ移行も同じ名前で表現されるのが普通です。

平政道は、平安時代中期の武将でした。彼は家督を継いだ後、数多くの戦闘に参加し、その武勇で知られていました。しかし、政道は比較的若い年齢で亡くなり、幼い息子の政長を残しました。政長は父の死後、家督を継ぐことになりましたが、まだ幼かったため、権力争いが勃発しました。

政長の叔父である政信は、政長の後見人として実権を握る立場にありましたが、自らの家督継承を目指すようになり、政長との間で激しい家督争いを繰り広げました。政信は、政道の弟であり、家督を巡る争いの中で、自らの正統性を主張しました。この争いにより、平家は二分され、内紛が激化しました。

一方で、政長の弟である政時は、幼い頃から叔父の政信のもとで育てられ、政信に忠誠を誓っていました。政信の家督継承を支持していた政時ですが、政長の死後に成人し、自らの権力を確立するために政信と対立するようになりました。

この家督争いにおいて、源氏の武将である源道政は、当初は政信を支持する立場を取っていました。しかし、政信が政長を支持する勢力と対立する中で、道政は次第に政長側に加担することを決意しました。道政は政長を支援し、内紛を利用して源氏の勢力を拡大しようとしました。

争いの最中、政長は若くして死去しました。この時点で政時は成人しており、今度は政信と対立することとなりました。政時は政信との争いの中で道政の支援を受け、政信を圧倒する立場に立ちました。

道政はこの機会に乗じて源氏の勢力を拡大し、平家の権力を奪取することに成功しました。こうして、平政道の死後に始まった家督争いは、平家の衰退と源氏の台頭を象徴する出来事となり、平安時代中期における歴史の一ページとして刻まれることになりました。

これが途中から違う名前になったら読みづらくてしょうがないですよね。 「政信」が途中で「信長」という文字で表現されたり、です。基本的に同じモノは同じ単語で一対一で表現されます。

違うものの記号化

じゃあ違うものをどう表現するか、どう違うかという観点をどう表現するか。先ほどのフルーツの分類で色の観点というのが良いかも知れません。 赤リンゴ、青りんご、紫ブドウ、緑ブドウ、などを考えると、基底となるフルーツ名に「赤」、「青」、、などといった色名がついています。 これは言語の観点だと「形容詞」に相当します。分かりやすく「限定詞」としておきます。 というのも、ただのリンゴという観点では同じであったものが、限定詞(ここでは色)の観点で小さく限定されるからです。 他には動きに対してもそういう限定を付与できます。速く歩く、ゆっくり歩く、などです。 これは言語の観点では「副詞」ですが同じように「限定詞」と読んでおきます。 言葉を限定するという意味では同じなので(こういうところにも出てきますね、現象として本質的なのです)。 限定詞は形容詞、副詞に限らないです。例えば赤リンゴ、赤い服、であれば「リンゴ」、「服」が限定詞になります。 これらは「名詞」です。なので、「限定詞」という単語で一括して表現するのが今の文脈では適切です。

再帰する限定詞

事物を分けるにしても、それは一段階で終わらないです。木の枝のように何度も分かれていきます。 例えば、赤リンゴについて、その産地が違ったらどうですか?長野県産赤リンゴ、青森県産赤リンゴ、といった具合に、 産地に関する限定詞が付与されます。長野県産赤リンゴでも、それがジャムなのかジュースになったかを区別する場合は、 長野県産赤リンゴでつくられたジャム、「」ジュース、となります。このように、限定はいくつも分岐していきます。

読書における理解

言語の本質の大まかな話は以上です。まとめると、 理解するとは事物を分けること。 事物を分けるとは同じものは同じもの、違うものは違うものとすること。 同じである、違うとする観点を示すこと。 同じであることは同じ単語で示される。 違うことは限定詞で示される。 限定詞は重ねがけされる。 読書の目的は色々あると思いますが、何かを理解する目的である場合は、 同じもの、違うものを言語レベルで把握し、それを現実に戻す作業が大事になります。

多色ハイライト

ここでPPL++の多色ハイライトが上記とどう関係するかを説明します。 多色ハイライトは重要語を自動的に計算し多色でハイライトするものです。 先述の同じもの、違うものを言語レベルで把握、のうち前者を容易にするものです。

同じものは同じ色

同じものは同じ単語で示されます。これは既に文字レベルで実現されています。「リンゴ」は「リンゴ」です。 ただし更に色を付与すると分かりやすいです。 ここでは限定詞の話を忘れて、多色ハイライトの威力が感じやすい武将の方の例をまず見てみます。 文章を再掲します。リンク先でボタンを押してみてください。武将名を始めとした重要語を自動的に多色ハイライトします。文章のアライメントも同時にかかります。
多色ハイライトの効果だけを見たいという声もあるかと思いますが、多色ハイライトは単語の識別を容易にする反面、色が多くなり無秩序さも高めます。エントロピーが上がります。その上がった分を文章アライメントで下げることで帳尻が採れます。


平政道

頻出する基底語

限定詞の例に戻ります。基底語は重要語でもあります。上で言うと「リンゴ」です。 全ての分岐はリンゴを起点としてなされます。 この基底は段階があって、赤リンゴもそれ以降の分岐から見たら基底です。 これが何をもたらすか、違いを説明する文章、つまり理解を促す文章では何度も出てくる単語が存在することになります。 つまり上でいう基底語です。基底語に限定子が次々に付与されるからです。以下の事例を見てみてください。

結合というと、色々な種類があります。例えば、共有結合、イオン結合、水素結合、金属結合、配位結合、ペプチド結合、グリコシド結合、エステル結合、アミド結合、そしてジスルフィド結合が挙げられます。それぞれの結合は、異なる原子や分子間で形成されるものであり、独自の特性と用途を持っています。今回はその中でもペプチド結合について取り上げます。

ペプチド結合は、アミノ酸同士が結びついてタンパク質を形成する際に非常に重要な役割を果たします。一般的に、アミノ酸のα炭素に基づく結合が見られ、これをαペプチド結合と呼びます。例えば、グリシンとアラニンが結びつく場合、αペプチド結合によってグリシン-アラニンαペプチド結合が形成されます。αペプチド結合は、タンパク質の基本的な構造単位を形成し、その安定性や機能に寄与します。

しかし、アミノ酸はα炭素以外の部位でも結合を形成することがあります。特に、β炭素に基づくペプチド結合はβペプチド結合と呼ばれます。βペプチド結合は、αペプチド結合とは異なる立体構造を持ち、これにより異なる生物学的機能を発揮します。例えば、β-アラニンとリジンが結びつく場合、βペプチド結合によってβ-アラニン-リジンβペプチド結合が形成されます。このようなβペプチド結合は、特定の酵素や構造タンパク質において重要な役割を果たします。

さらに、αペプチド結合とβペプチド結合は、それぞれの特性を生かして異なる応用がされています。αペプチド結合は、通常のタンパク質構造を形成する際に一般的に見られますが、βペプチド結合は、薬物デリバリーシステムや新規材料の設計に利用されることがあります。グリシン-アラニンαペプチド結合のような典型的なαペプチド結合は、分子の柔軟性と機能性を持つため、広く研究されています。一方、β-アラニン-リジンβペプチド結合のようなβペプチド結合は、その安定性と耐性から、新しいバイオマテリアルの開発に注目されています。

このように、ペプチド結合、特にαペプチド結合とβペプチド結合は、生物学的および化学的な研究において重要な位置を占めています。それぞれの結合の特性や用途を理解することは、タンパク質工学や新規材料科学における重要な知識となります。

ネタバラシをすると結合を基底として以下の派生した単語が出てきます。

「結合」
「ペプチド結合」
「αペプチド結合」
「βペプチド結合」
「グリシン-アラニンαペプチド結合」
「β-アラニン-リジンβペプチド結合」


当然ですが基底である「結合」は広範に渡っています。 ペプチド結合はその一つ後の派生でこれも広範に渡るのが予想されます。 PPL++を起動し、自動で多色ハイライトした結果が以下のとおりです。 以下のリンク先でボタンを押して見比べてみてください。

ペプチド結合(フェーズ1)

結合にも色んな種類があるなぁ、ペプチド結合にも色んな種類があるなぁ、というのが多色ハイライトを施すとよく分かります。ペプチドと結合の分布を俯瞰的に眺められるからです。ハイライトの施されない文章だとそれは難しいです。


また、上のは自動ハイライトが適用された状態ですが、自動ハイライトはあくまで最低限のハイライトです。 少し大きな粒度で観察したいことも有ります。例えば上であれば「αペプチド結合」と「βペプチド結合」の関係を見たいなぁという文脈です。
その際には手動でハイライトする必要が有ります。やってみた結果が以下のとおりです。

ペプチド結合(フェーズ2)

「αペプチド結合」と「βペプチド結合」の内部が分裂していないので、非常に読みやすいです。

この追加設定にコストをかけると逆に読書からの集中が切れてしまいますが、PPL++だと始点と端点をタップするだけで実現できます(詳しくはサンプルで体験してみてください)。

検索語のハイライトとの違い

検索した際に検索語がハイライトされるのと同じじゃんと思われたかもです。 違うのは「検索語の割り出し方」です。上の例だと結合、ペプチドだというのはなんとなく探せるかもですが、 武将の例だとちょっときついかもです。 また、そもそも武将の例だと多色、つまり複数の単語(検索語)を指定する必要がありますが、 そういう複数色のハイライト機能はメジャーではないですし、あったとしてもいちいちキーボードで登録する必要があり面倒です。 その辺り、PPL++では全自動にしたので非常に楽に多色ハイライトの恩恵を受けられます。

難解な文章の意味

難解な文章は上のような、同じものは同じ単語、違うものの差異を出すには再帰的な限定詞の繰り返し、 この二つを省略したりしない。つまり、多少冗長になっても正確さを優先して上の原理を外さない文章です。 同じ単語が続くと眠たくなりますよね、それも再帰的なので一つの単語だけでないです。 そういう意味でまず難解です。次に、上のような何が同じか、差異はどこにあるか、 という真面目?な話をしている文章はそもそも取り扱われる内容、単語が難しいです。 正確に表現、つまり間違ってもらっては困る、ということなので。例えば数学、哲学、法律、などはまさに典型です。 多色ハイライトの発端である特許文書も同様です。定義等に曖昧さが残るのは許されないです。 学校の教科書でも、参考書は読みやすいですが文科省指定の教科書、みたいのは難解です。間違えると大変なので。 PPL++は、逆にそのような文書に効果的です。速読術は実際には読者が慣れている領域、簡単な文章にしか使えない、だったりします。 もちろんPPL++を使用しても慣れてない領域がきついのは変わらないですが、上の意味での難解な文章は攻略可能です。 ダメージ0しか通らなかったのがダメージ1が通ります。この差は大きいです。いつかは読めるようになります。 今はChatGPTみたいな話し相手もいます。困ったら聞けば良いのです。そしてChatGPTも正確さを優先して冗長です。 PPL++と非常に相性が良いです。ぜひ試してみてほしいです。

まとめ

理解する(分かる)とは現実を分けることです。 同じものは同じ、違うものは違うものとします。 ただ選り分けるだけでなく、同じである、違うとする観点を示すのが大事です。 「同じ」を言語化すると同じ単語になります。 「違う」と「その観点」を言語化すると、「基底語」に限定詞が付与された単語になります。 限定詞は再帰的に重ねがけされます。 読書の目的は色々あると思いますが、何かを理解する目的である場合は、 同じもの、違うものを言語レベルで把握し、それを現実に戻す作業が大事になります。 PPL++の一つの機能である多色ハイライトは、重要な単語を自動的に色分けします。 基底語も重要語として計算されます。 これは「同じもの」を言語レベルで把握するのを容易とし、言語を現実に戻すのを助けます。

予告

では「違う」を言語レベルで把握しやすく出来ないか、と思われるかも知れません。 結論としては出来ます。PPL++にもその機能は備わっていますが、解説は後回しにします。 理由は後で明らかになります。まだこの段階では準備が整っていません。


次回は少し話題が変わって「自然な単位」の話をします。 現実を記号化したものが言語ですが、一定の粒度で記号化されます。 その中で人が見た際に認識しやすい自然な単位(粒度)が存在するという話です。 それでは。また次回。


余談 - 武将の例も限定詞ケース

武将の例も実はペプチド結合の例と同じ構図になっています。 つまり、基底語に対して限定子が付与されている状態なのです。 例えば第一文の「平政道は、平安時代中期の武将でした。」は、 基底語が「平政道」、限定子が「〇〇は、平安時代中期の武将でした。」、となります。 〇〇の部分に「織田信長は、平安時代中期の武将でした。」と、織田信長を入れることが出来ます。 それの真偽は別として入れることが可能です。これは「赤い〇〇」と同じ構図です。 「赤い◯◯」に対して、「赤いリンゴ」、「赤い帽子」、とやることが出来ます。同じです。 それで、基底語(武将名)が沢山あり、それを多色ハイライトした、というのが上の平政道の文章でした。