都道府県独立国家論
都道府県独立国家論(とどうふけんどくりつこっかろん)は、現在の47都道府県が、領域・人口・経済などの条件をそのままに維持しつつ日本から主権国家として独立することを想定した、現在および将来像についての議論を言う。空想国家論のひとつ。
概説編集
民族主義的・政治的な動機というよりは、町おこし・地域おこし(地域振興)あるいは政策を再構築する目的での議論が多い。いきおい、建国の具体的手法さらには独立維持(軍事力・国家政府・政治体制)など、国家の独立獲得への過程については焦点になりにくい。例えば、日本において過去に存在した独立国家の定義のひとつとして「独自の元号(私年号)の使用」があるが、本論においてはほとんど俎上に載らない。
それよりも、無条件で既に独立が果たされたという前提に立って、食料自給率・国内総生産などの国力の現状分析や未来予測についての論点が重視される。また、「神奈川都民・埼玉都民・千葉都民・茨城都民」などの言葉に代表されるような、自身の居住する都道府県への帰属意識が薄いことについての問題提起をも含む。
なお、北海道や琉球諸島については、民族自決の意味合いを含んだ議論もある(アイヌ独立運動、琉球独立運動なども参照事)[1]。
議論は散発的であり、個別の都道府県が単独で独立する条件のものが、ほとんどを占める。他方、複数の都道府県が同時に独立しての連邦制・国家連合などについてのものは、あまり見られない。より現実味を帯びた議論は、道州制についてのものが近年は活発である。
議論の質・内容は、荒唐無稽な思いつきから、データの裏付けがある実証的なものまで、さまざまである。本稿では、フィクションや、現実世界における重要なテキストを、まとめて紹介する。
都道府県別編集
北海道編集
- 梅棹忠夫「北海道独立論」 - 以下の書籍に所収。
- 梅棹忠夫・著 『日本探検』 中央公論社 1960年
- 臼井吉見・編 『現代の教養 1 』 筑摩書房 1966年
- 石毛直道・守屋毅・編 『梅棹忠夫著作集 第7巻 』 中央公論社 1990年8月 ISBN 4-12-402857-1
- 『北方ジャーナル』連載「北海道独立論」 - 国立旭川工業高等専門学校教授・白井暢明
- 白井暢明の北海道独立論 - ウェイバックマシン(2002年2月19日アーカイブ分)
奥羽編集
関東甲信越編集
埼玉県編集
- 土屋義彦・著 『小が大を呑む - 埼玉独立論』 講談社 1997年2月 ISBN 4-06-208266-7
- 「埼玉県領事館」 - 埼玉都民を参照。
千葉県編集
- 「初夢:きょう「千葉国」誕生 /千葉」 (毎日新聞 2005年1月1日)(Internet Archiveでのスナップショット)
- 「変化に対応した千葉県活性化プラン」 - 千葉政経懇話会 2006年3月例会(2006年3月30日) での、千葉大学教授・明石要一の講演。
- 翌日、千葉日報2006年3月31日付で「千葉共和国を提唱 - 明石千葉大教授が講演 政経懇例会」の見出しで報道。
東京都編集
- 水木楊・著 『東京独立共和国』 文藝春秋 1999年10月 ISBN 4-16-318720-0
- 伊豆諸島の大島大誓言
神奈川県編集
新潟県編集
- 豊田有恒 「嗚呼!新潟人民共和国」(短編)
- 豊田有恒・著『ビバ日本語!』(徳間書店 1977年6月、徳間文庫 徳間書店 1982年2月 ISBN 4-19-577281-8)所収。
- 杉元伶一(原作)・加藤伸吉(作画)『国民クイズ』講談社、1993年。
関西編集
大阪府編集
- 日清製粉 テレビコマーシャル「大阪内閣成立」(1999年〜2000年)
- テレビドラマ 『世にも奇妙な物語 秋の特別編 (2008年)』「どつきどつかれて生きるのさ」(2008年9月23日放送)
- 大阪国独立を考える会・著 『大阪がもし日本から独立したら』 マガジンハウス 2010年4月22日
- ISBN 978-4838720934
四国編集
- 高知新聞 創刊100周年企画連載 『時の方舟』 第六部「近未来フィクション 高知県独立」 (2004年)
- 連載の単行本化は、高知新聞社・編 『時の方舟 - 高知あすの海図』 高知新聞社 2004年11月 ISBN 4-87503-179-3
九州編集
- 終戦直後の1945年12月26日には、松本治一郎が「九州共和国論」として九州独立論を主張している[2][3]。
- 「九州府構想」
- 平松守彦・著 『地方からの発想』(岩波新書 新赤版 138) 岩波書店 1990年9月 ISBN 4-00-430138-6
- 平松守彦・著 『私の日本連合国家論』 岩波書店 1997年7月 ISBN 4-00-002632-1
- 駄田井正・編著 『九州独立も夢ではない -ポスト近代の国づくり-』同文舘出版 1999年 ISBN 4-495-86401-7
- 東国原英夫・江口克彦 九州「独立」論--道州制実現で"世界17位のGDP"を伸ばす(voice)PHP研究所 2009年5月[4]
- 九州は独立できるか?(1-4)(産経ニュース)2014年
- 村上龍・著『半島を出よ』幻冬舎、2005年。
琉球諸島編集
- 映画 『さよならニッポン! GOODBYE JAPAN』 (製作・ぶんか社・MITグループ、配給・ ギャガ・コミュニケーションズ・シネカノン 1995年)
- 監督・堤幸彦、脚本・加藤学生、出演・緒形拳、他。沖縄にある日本最南端の島・赤尾根古島(あかおねこじま)は、人口700人。「赤尾根古国」として独立を宣言した村の大騒動を描いた、政治喜劇。ロケ地は宮古島。
- 大山朝常『沖縄独立宣言 ヤマトは帰るべき「祖国」ではなかった』、現代書林、1997年4月。ISBN 4-87620-935-9
- 小熊英二『〈日本人〉の境界 沖縄・アイヌ・台湾・朝鮮植民地支配から復帰運動まで』、新曜社、1998年7月。ISBN 4-7885-0648-3
- 竹中労『琉球共和国 汝、花を武器とせよ!』(『ちくま文庫』)、筑摩書房、2002年6月。ISBN 4-480-03712-8
- 比嘉康文『「沖縄独立」の系譜 琉球国を夢見た6人』、琉球新報社、2004年6月。ISBN 4-89742-059-8
- 琉球自治州の会『琉球自治州の構想』、那覇出版社、2005年10月
- 小説「沖縄独立す―北東アジアに軍事危機が迫る」柘植久慶著。保守系、革新系がそれぞれ政権を握った場合の2本立てシミュレーション。
関連文献編集
- 三崎亜記・著 『となり町戦争』 集英社 2005年1月 ISBN 4-08-774740-9
- 集英社文庫 集英社 2006年12月 ISBN 4-08-746105-X
- 地方自治体が業務の一環として、となり町と戦争を行なう。
資料編集
- 平成20年度 都道府県別食料自給率について (農林水産省)
- 国の国内総生産順リスト
- 県民経済計算
脚注編集
- ^ 文化的な視点で見れば、北海道や琉球諸島以外の地域でも、近畿や関東で栄えた日本の中央政権(ヤマト政権から今の日本政府に至るまで。)とは異なる歴史認識、信仰や郷土主義を持つ例は全国各地に点在する。例えば、蝦夷のアテルイや大武丸、熊襲のクマソタケル、隼人の弥五郎どん、飛騨の両面宿儺、信濃の諏訪信仰、各地の土蜘蛛の伝説(田油津媛)、承平天慶の乱(将門信仰)。また近代以降でも、戊辰戦争(奥羽越列藩同盟の東部皇帝構想)、箱館戦争(蝦夷共和国)、西南戦争(西郷札)や秩父事件(独自の年号「自由自治」)等で中央政権と戦火を交えた地域、第二次世界大戦の混乱で一時的に日本の行政権を外れていた地域(八重山諸島の自治組織(八重山自治会)、伊豆大島の自主憲法(大島大誓言)など。)では、その地域の独自の歴史観を今なお保持する例もある。もっとも、「令和」の現在、大掛かりな各地域の独立を目指す組織は存在していない。
- ^ 日本社会党福岡県本部党史編纂委員会・編『日本社会党福岡県本部の三五年』日本社会党福岡県本部 1983年
- ^ 星乃治彦「九州独立論者の九州現代史 -地方史から九州史へ-」 福岡大学人文学部歴史学科・編著『歴史はもっとおもしろい 歴史学入門12のアプローチ』 西日本新聞社 2009年 ISBN 978-4-8167-0796-4
- ^ [1]