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軌道角運動量 - Wikipedia

軌道運動

特に量子力学において位置それ共役運動表される運動
方位量子から転送
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軌道運動どうかくうんどうりょう英語: orbital angular momentum特に量子力学において位置それ共役運動表される運動ことある

例えば原子電子原子核周囲作る軌道運動する[疑問]電子角運動量うち電子その性質として持つスピン運動除く部分軌道運動ある

概要編集

定義編集

軌道運動演算以下よう定義れる[1](p98)

定義至る背景編集

この定義古典力学における運動定義

において位置 x 運動 p 形式位置演算

x x 乗じる意味する運動演算

置き換えるられものある

一般編集

より一般3次元空間単位ベクトル n=(n1,n2,n3) に対し内積

n 回転する軌道運動演算いう

性質編集

交換関係編集

表記する軌道運動以下交換関係満たす

ここ εijk エディントンイプシロンある特に最後軌道運動同士交換関係運動代数呼ばいる

極座標表示編集

球面座標 (r, θ, φ) 用いる^L

書ける[1]:p98 さらに球面座標表示曲線 R(r)=(r,0,0)Θ(θ)=(0,θ,0)Φ(φ)=(0,0,φ) 原点における接線方向単位ベクトル ereθeφ するときereθeφ 方向軌道運動演算 ^Lr, ^Lθ, ^Lφ する以下成立する

軌道運動自乗編集

定義編集

軌道運動二乗

定義する

交換関係編集

この演算軌道運動成分ある

極座標表示編集

極座標書き表す

ある[2]

ラプラシアン関係編集

実はこれラプラシアン極座標表示関係あるすなわちラプラシアン極座標表示

 

方向球面方向わける

成立する[3]

回転対称関係編集

波動関数回転編集

3次元空間 R3 における回転行列全体集合

3次元実数係数行列で

ここI 単位行列ありtR R 転置行列ある 回転行列 R SO(3) に対し波動関数全体空間 ユニタリ演算

定義する[4]これ波動関数回転みなせる

軌道運動演算関係編集

単位ベクトル n=(x,y,z) Rn(s) n として右手 s ラジアンだけ回転する行列する以下成立する

ここ n 回転する軌道運動演算ある

証明編集

本節z 周り軌道運動 ^Lz場合のみ証明するそれ以外場合同様ある

既に述べよう^Lz球面座標 (r, θ, φ) 用い

表記できるので任意波動関数ψ に対しψ極座標表示すれ

なり主張証明でき

回転対称から交換関係編集

Rn(s) 微分計算する

なる 関数 λ*

任意波動関数 ψ SO(3) 取る任意 R(θ) に対して成立するよう定義する詳細省くこのよう関数well-defined定義可能ある

成立する知らいる[5]よって

すなわち軌道運動交換関係Fn 交換関係から導かものある

Fn以下満たす知らいる[6]:p36ここ×クロスある

よって軌道運動交換関係

あるこれ述べ交換関係一致するに関する軌道運動交換関係同様求めることできる

球面調和関数編集

述べるよう軌道運動演算固有関数球面調和関数記述可能ので本節その準備として球面調和関数定義性質述べる

なお球面調和関数定義数学物理異なるので本節両方定義紹介両者関係述べる

数学における球面調和関数編集

次元空間R3における多項式p

満たすもの調和多項式いい調和多項式p多項式あるとき 球面

制限もの球面調和関数いう

物理における球面調和関数編集

3次元空間 R3 場合R3 球面座標 (r,θ,φ) 表す下記関数 物理における球面調和関数という

   (B1)

ここ

m整数   (B2)

あり ルジャンドル多項式[7]

   (B3)

あるすなわち ルジャンドル微分方程式

あるなお 定義における係数後述する内積から定義れるノルム 1 なるよう選んものある

2つ定義関係編集

関数 f

定義するf直交座標書いもの数学における球面調和関数なる

またp数学における球面調和関数するp極座標必ず

という線形書ける

これら事実証明球面調和関数項目参照たい

性質編集

3次元空間R3球面座標 (r,θ,φ) に対し

成立するそこでR 関数 χ, ξ 3次元空間 R3 単位球面

 

2積分関数 f, g に対し内積以下よう定義する

このとき定理成立する定理導出詳細球面調和関数項目参照

定理1  球面調和関数以下性質満たす

定理2   R3任意自乗積分関数f(x,y,z)に対し 満たす R 積分関数

なるもの一意存在する

の固有関数

数学における球面調和関数pの固有関数である

   (A1)

ここ球面調和関数p次数あるなお方向任意自乗積分関数するから明らか

であるのでの固有関数である

既に述べよう数学における球面調和関数物理における球面調和関数線形書けるので定理2より固有関数上述もの限られる

(A1)証明編集

既に述べようラプラシアン極座標表示

 

方向球面方向わける

成立するので[3]p球面調和関数する

ベクトルx方向

球面方向

分解できしかもp多項式あるので

の固有関数

に物理学における球面調和関数 を作用させると

定理1より

  • S2 面積要素 sin θ dθ dφ に関して規格いる
  • 互いに直交いる

定理2より

  • ^Lz 任意自乗積分関数球面調和関数用い固有値展開可能ある

量子編集

これまで記述から分かるよう

満たす存在必要なら定数倍すれ

成立する

軌道運動量子方位量子m 軌道磁気量子いう前節述べよう

満たす

昇降演算編集

定義編集

昇降演算

により定義する以下この2つ合わせ

略記する

性質編集

簡単計算から交換関係

満たすのでψ固有値に対する固有関数する

なのでは固有値に対するの固有関数である

すなわち昇降演算対応する固有関数対応する固有関数移す

よって特に

×(定数)

成立する

その他性質編集

するT10:p211-212交換関係

成立すること簡単計算から分かる

証明編集

最後だけ確認する

for w=x, y, zとすると
ここで
ので求めるべき従う

工学応用編集

電磁波(含む)軌道運動持ちこれ異なる一周波数かつ同一方角から送信あっ特別受信装置(少なくともごく短距離において)混信免れること判明おり多重通信もしくは軌道運動多重通信いう伝送距離上限など改善各種無線通信ほか光ファイバー通信応用目指す研究なさいる

参考文献編集

  • [原1994] 原康夫 量子力学岩波書店岩波基礎物理シリーズ1994年6月6日ISBN 978-4000079259
  • [ランダウリフシッツ教程] L.D. ランダウE.M.リフシッツ井上健男ランダウリフシッツ物理教程 量子力学ちく学芸文庫2008610
  • [A07] Joṥe Alvarado (2007年12月4日). Group Theoretical Aspects of Quantum Mechanics (PDF). 2016年12月1日
  • [H13] Brian C.Hall (2013/7/1). Quantum Theory for Mathematicians. Graduate Texts in Mathematics 267. Springer 
  • [T10] Gerald Teschl (2010). Mathematical Methods in Quantum Mechanics With Applications to Schrödinger Operators. Graduate Texts in Mathematics 157 (SECOND EDITION ed.). Springer 
  • [日本測地学会]高知大学自然科学 田部井隆雄神奈川温泉地学研究所 里村幹夫京都大大学院理学研究 福田洋一 (2004). 4-4. ルジャンドル多項式, 多項式. 日本測地学会. 201714閲覧
  • [武藤11-14]武藤一雄.  軌道運動 (pdf)”. 量子力学 平成年度 学部 学期 . 東京工業大学. 2017813閲覧
  • [武藤11-15]武藤一雄. 中心ポテンシャル束縛状態 (pdf)”. 量子力学 平成年度 学部 学期 . 東京工業大学. 2017813閲覧

脚注編集

  1. ^ a b 1994
  2. ^ 武藤11-14p6
  3. ^ a b 武藤11-15 p13
  4. ^ H13 p396 Def 17.1A07 p37
  5. ^ 理由λ同型ありλリーso(3)誘導するリー同型λ*あるのでλ*リー括弧保存する
  6. ^ A07
  7. ^ 日本測地学会 2004

関連項目編集