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操作方法は関数型玩具製作所

原子価結合法 - Wikipedia

量子化学において原子結合げんしかけつごうほう: valence bond theory略称: VB化学結合原子原子軌道属する電子相互作用によって説明する手法ある

歴史編集

1916GNルイス化学結合2共有結合電子相互作用によって形成れる提唱ルイス構造として分子描写1927量子力学考察基づい水素分子H2結合特性計算初めて可能ハイトラーロンドン理論立てられ具体ヴァルター・ハイトラー共有結合作るためどのよう2水素原子波動関数合わせる示すためシュレーディンガー波動方程式1926どのよう使う決定ハイトラー同僚フリッツ・ロンドン呼び出し彼ら理論詳細練り上げ[1]ライナスポーリング共鳴1928軌道混成1930というVBにおける2重要概念生み出すためハイトラー-ロンドン理論ルイス結合考え使っまたジョンスレーターライナスポーリングによって原子拡張そのためハイトラー・ロンドン・スレーター・ポーリング略しHLSP呼ばれることある著名Valence1952著者あるチャールズクールソンよれこの時代現代原子結合理論幕開けなっそれ以前古い原子結合理論本質波動力学以前用語書か原子電子あっ

共鳴理論1950年代ソビエト化学によって不完全あるとして批判[2]

理論編集

原子結合理論よれ共有結合1電子含んいるそれぞれ原子半分占有原子軌道重なり合いによって2原子形成れる原子結合構造ルイス構造いる単一ルイス構造書くことできない場合複数原子結合構造使われるこれらVB構造特定ルイス構造表わす原子結合構造組み合わせ共鳴理論要点ある原子結合理論関与する原子重なり合っ原子軌道化学結合形成する考えるこの重なり合いため電子結合領域存在する可能最も高くなる原子結合理論結合弱く連結軌道として見る原子結合理論基底状態分子において典型より簡単利用できる軌道および電子結合形成基本変化ない

2原子σ結合: 電子密度局在
π結合形成いる2p軌道

原子軌道重なり合いいくつ種類あるσ結合2共有電子属する軌道突き合わせ重なり合う起こるπ結合2軌道互いに平行重なり合う起こる 例えば2s-軌道電子結合2常に同軸あるためσ結合ある結合次数観点から結合1σ結合持ち結合1σ結合1π結合から成り三重結合1σ結合2π結合含むしかしながら結合ため原子軌道s軌道p軌道重ね合わ軌道用いることできる結合ため適切特徴持つ原子軌道得るため手法混成呼ばれる

水素分子編集

単純近似編集

まず水素原子Ha1s軌道αスピン上向き電子1属し水素原子Hb1s軌道βスピン下向き電子2属しいる状態考える波動関数これら

あるハートリーこの波動関数からられる結合エネルギーDe 0.25 eV距離Re 1.7 bohr実験結果De = 4.746 eVRe = 1.400 bohrほとんど合わない

重ね合わ編集

ハイトラーロンドン電子交換考慮入れる必要ある提案水素原子HaHb接近電子1電子2もはや区別できない同種粒子ため水素原子Ha電子2Hb電子1属し状態等しく考慮なけれならないそこで電子ラベル交換状態予め含ん波動関数作る

この波動関数適切スピン固有状態ないしかしながらスピン向き混合すること2スピン固有状態作ることできる

1位相重なり原子強め合う領域できるので結合2打ち消し合うので結合ある

適切対称波動関数からより現実De = 3.20 eVRe = 1.51 bohrられるさらに水素1s軌道関数パラメータ導入計算するDe = 3.782 eVζ = 1.166改善れる[3]

スピン状態三重状態編集

パウリ原理から電子ラベル交換波動関数符号変わらなけれならないしたがって結合空間座標軌道部分対称のでスピン座標部分反対称なけれならこれ満たすスピン関数

のみある状態[4]一方結合空間座標軌道部分反対称のでスピン座標部分対称なけれならないこれ満たすスピン関数

3三重状態ある

上述よう空間座標部分スピン座標部分分離できる1ならび2電子場合のみあるスレイター行列参照

分子軌道比較編集

原子結合電子ある1原子原子軌道局在いる考えるに対して分子軌道電子分子全体局在軌道属する考える

分子軌道まず原子軌道線形結合によって結合軌道σ結合軌道σ*作ら次にエネルギー低い結合軌道スピン向きαβ2電子12入れる基底状態

分子全体広がる軌道分子軌道電子1属しいる状態表すしかしこの関数電子ラベル交換に対して反対称なっないそこでラベル交換状態予め含ん関数作る

係数省略

このラベル交換に対して反対称満たしいるスレイター行列参照この軌道部分スピン部分分け

書くことできる

原子結合比較するため分子軌道原子軌道線形結合表わし軌道部分代入する

なる[5]前半2原子結合による描写等価あり共有結合状態表わしいる後半2どちら一方原子2電子偏っイオン化状態見なせるしたがってVB異なりMOH2分子個々原子解離正しく計算できない

イオン構造取り入れ編集

上述よう原子結合による波動関数100%共有結合分子軌道による波動関数50%共有結合50%イオンあるしかし実際その中間考えられるそこで共有結合構造イオン構造混合すること精度改善できる[6]

典型共有結合構造75%イオン構造25%ある[5]

一方MO基底状態について波動関数最適結合配置 (σ*1s)2混合することによって改善することできる配置相互作用CI参照

このCI計算水素分子基底状態98.8%1.2%占める[7]

原子結合発展編集

原子結合2周以降元素含む分子応用する問題生じる例えばメタン4C-H結合等価あること説明できないなぜなら電子原子軌道局在いるなら炭素4電子うち1電子2s軌道残り32p軌道属することなり等価ないからあるそこで分子形成する2s軌道2p軌道混じり合っ分配新しい4等価軌道生じる考えるこの新しく生じ軌道混成軌道呼ばれるものあるメタン場合s軌道1つp軌道3混成軌道つくるのでsp3混成軌道いうエチレン炭素原子よう結合持つ原子sp2混成軌道アセチレン炭素原子よう三重結合持つ原子sp混成軌道考える

また1,3-ブタジエンベンゼンよう共役持つ分子について問題あっこれら分子π電子局在安定寄与いるこれ原子電子局在いる考える原子結合本質矛盾いるこれに対して複数極限構造共鳴という説明することなっ

原子結合概念それまで化学結合延長あるため当時化学受け入れやすかっしかし量子化学計算応用する複雑理論なっしまっそのため量子化学計算盛んなっくる分子軌道主流なっいっ

また酸素分子O2実際磁性あるかかわら原子結合理論磁性予測しまう欠点などよく知らいるこの分子軌道O2基底状態三重状態磁性あること自然予測れる

原子結合現在編集

現代原子結合分子軌道補完する分子軌道分子2特定原子局在電子という原子結合考え固執分子全体にわたって広がりうる分子軌道電子分配れる考える分子軌道磁気特性イオン化特性直接的分かりやすく予測することできるに対して原子結合結果与えるより複雑やり方必要ある現代原子結合芳香特性π軌道スピン結合によるもの見なす[8][9][10][11]これ本質ケクレ構造共鳴という古い考え方ままある対照分子軌道芳香π電子局在として見る原子結合取り扱い比較小さい分子制限れるこれ原子結合軌道 ならびに原子結合構造直交欠如ためあるそれに対して分子軌道直交いる一方原子結合化学反応経過結合切断ならび形成れる起こる電荷再編について分子軌道よりはるか正確描写与える具体原子結合原子分子別々原子解離正しく予測するに対して単純分子軌道原子イオン混合解離予測する#水素分子参照例えば水素について分子軌道関数共有原子結合イオン原子結合等しく混合ものあるため2水素原子引き離しいっ分子2水素原子という状態水素イオンおよびイオンという状態等しく混合状態解離する不正確予測しまう

現代原子結合原子軌道なり多く基底関数拡大原子結合軌道なり置き換えるこれら基底関数1原子中心古典原子結合描写与える分子原子中心することできるられエネルギーハートリー-フォック参照波動関数基づい電子相関導入計算からられエネルギー負けない精度有する[12]

脚注編集

  1. ^ Walter Heitler. Key participants in the development of Linus Pauling's The Nature of the Chemical Bond'. 2016年3月24日
  2. ^ Hargittai I. (2015). When Resonance Made Waves. In Hargittai B., Hargittai I. (eds). Culture of Chemistry. Boston, MA: Springer. doi:10.1007/978-1-4899-7565-2_30 
  3. ^ Wang, S. C. (1928). The Problem of the Normal Hydrogen Molecule in the New Quantum Mechanics. Physical Review 31 (4): 579586. doi:10.1103/PhysRev.31.579. 
  4. ^ Peter AtkinsJulio de Paula著千原秀昭中村亘男 アトキンス物理化学 ()東京化学同人2009年第8版pp. 379-381ISBN 978-4807906956
  5. ^ a b Coulson, C.A.; Fischer, I. (1949). XXXIV. Notes on the molecular orbital treatment of the hydrogen molecule. Phil. Mag. 40 (303): 386393. doi:10.1080/14786444908521726. 
  6. ^ Weinbaum, Sidney (1933). The Normal State of the Hydrogen Molecule. J. Chem. Phys. 1 (8): 593596. doi:10.1063/1.1749333. 
  7. ^ Alston J. Misquitta (2020年2月12日). H2 in the minimal basis. 2020年11月20日
  8. ^ Cooper, David L.; Gerratt, Joseph; Raimondi, Mario (1986). The electronic structure of the benzene molecule. Nature 323 (6090): 699. Bibcode: 1986Natur.323..699C. doi:10.1038/323699a0. 
  9. ^ Pauling, Linus (1987). Electronic structure of the benzene molecule. Nature 325 (6103): 396. Bibcode: 1987Natur.325..396P. doi:10.1038/325396d0. 
  10. ^ Messmer, Richard P.; Schultz, Peter A. (1987). The electronic structure of the benzene molecule. Nature 329 (6139): 492. Bibcode: 1987Natur.329..492M. doi:10.1038/329492a0. 
  11. ^ Harcourt, Richard D. (1987). The electronic structure of the benzene molecule. Nature 329 (6139): 491. Bibcode: 1987Natur.329..491H. doi:10.1038/329491b0. 
  12. ^ Shaik, Sason S.; Phillipe C. Hiberty (2008). A Chemist's Guide to Valence Bond Theory. New Jersey: Wiley-Interscience. ISBN 978-0-470-03735-5 

関連項目編集