千葉県
ちばけん 千葉県 | |||||
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国 | 日本 | ||||
地方 | 関東地方 | ||||
団体コード | 12000-6 | ||||
ISO 3166-2:JP | JP-12 | ||||
面積 |
5,157.61km2 (境界未定部分あり) | ||||
総人口 |
6,275,572 (推計人口 | ||||
人口密度 | 1,217人/km2 | ||||
隣接都道府県 |
東京都 埼玉県 茨城県 神奈川県[注釈 1] | ||||
県の木 | マキ(1966年9月29日指定) | ||||
県の花 | 菜の花(1954年4月NHK一般公募) | ||||
県の鳥 | ホオジロ(1965年5月10日指定) | ||||
県の魚 県民歌 県民の日 県のマスコット |
タイ(1989年2月23日指定) 千葉県民歌(1964年12月制定) 6月15日 チーバくん(2011年1月指定) | ||||
千葉県庁 | |||||
知事 | 熊谷俊人 | ||||
法人番号 | 4000020120006 | ||||
所在地 |
〒 千葉県千葉市中央区市場町1番1号 北緯35度36分16.4秒 東経140度7分23.3秒 / 北緯35.604556度 東経140.123139度 | ||||
外部リンク | 千葉県 | ||||
ウィキポータル | 日本の都道府県/千葉県 | ||||
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概要編集
日本の関東地方南東側、東京都の東側に位置し、県域は東海道筋に古くから栄えた律令制以来の房総三国である上総国(南総)・安房国(房州)の全土と、下総国(北総)の一部から成り立っている。県の大部分を房総半島が占める。
中心業務地区の幕張新都心、アジア地域有数の国際見本市会場である幕張メッセ、国際線旅客数・就航都市数・貿易額で日本一の成田国際空港、日本三大港湾である東京港湾の一角を担う千葉港、水揚げ量日本一で日本三大漁港の銚子漁港、集客施設来場者数日本一のディズニーリゾート、日本で唯一国際標準模式層断面及び地点に認定され、チバニアン(千葉時代)として地質年代の名称になる証拠となった地層千葉セクション、東京大学・千葉大学(柏キャンパス)を中心とした公・民・学連携の柏の葉スマートシティ、日本一の数を有する海水浴場、自然豊かな南房総国定公園・水郷筑波国定公園などを筆頭とした観光・リゾート地、優れた社会基盤、豊かな地域資源、バランスの取れた産業構造を核としている[3]。訪日旅客数は全国第3位[4]。
県の人口は6,284,480人[5]、面積は5,157.61平方キロメートル(km2)である。1920年(大正9年)10月1日、国勢調査での県の人口は約100万人であった。その後増加を続け、1983年(昭和58年)10月1日には500万人を超え、2002年(平成14年)9月17日に600万人を突破した。以降、引き続き人口は増加している[6][注釈 2]。
県内の市町村数は54市町村 (37市16町1村)、県内の政令指定都市は千葉市、中核市は船橋市・柏市、業務核都市は千葉市・柏市・成田市・木更津市・印西市である。
1873年(明治6年)6月15日に、北西部の印旛県と南部の木更津県が合併し、旧両県の境で千葉氏の本拠地でもあった現在の千葉市中央区(亥鼻城址周辺)に県庁が設置され、現在の千葉県が成立した。6月15日が県民の日と定められた所以である。
県内には100万規模の人口を有する政令指定都市の千葉市を筆頭に、中核市最大の人口約64万人を有する船橋市、50万都市の市川市・松戸市、40万都市の中核市である柏市、30万都市の市原市、20万都市が流山市、八千代市と中核市同等の人口を持つ自治体が多数存在することも特徴として挙げられる。千葉市は国家戦略特区・国際会議観光都市・都市再生特別地区・グローバルMICE都市[7]に指定されており、国際機関を始めとした国の業務中枢機能と住宅中心の土地利用計画を大幅に見直した幕張新都心を中心に、関東地方において独自の重要性を持つ世界に開かれた国際都市の役割を担う。
平地の割合が大きく、可住地面積が広いことからも古くから住宅地開発が進んでおり、県北西部の人口は稠密である。特に高度経済成長と都市部の過密化により、通勤五方面作戦にて複々線化を行った総武本線・常磐線や京成線沿線に位置する都市は繁華街も多く、大規模商圏による拠点性・集積性のある駅周辺の人口増加が著しい傾向にある[8]。近年では都市再開発が進み、全国813市区中財政力指数第1位の浦安市[9]や第4位の成田市[10]、全国住みよさ7年連続第1位の印西市[11]、全国共働き子育てしやすい街第1位の松戸市など[12]、財政・制度・施設が充実した都市も増えている。特に新通勤五方面作戦で提示された性格を継承して開業した京葉線沿線(新浦安、南船橋、幕張ベイタウンなど)や、つくばエクスプレス沿線(流山おおたかの森[13]、柏の葉スマートシティなど[14])のほか、北総線・新京成線沿線[15](新鎌ヶ谷など)、東葉高速線沿線(八千代緑が丘、八千代中央など)、東京湾アクアラインにより利便性が向上した袖ケ浦市・木更津市(かずさアクアシティ[16])などでは、新興住宅地の開発が加速し、東京都心や成田国際空港・東京国際空港[17]へのアクセスの良さからも、大規模なマンションや住宅街が林立し、商業施設の充実、整備された公共施設、自然豊富な住環境が整っている[18]。買って住みたい街[19]においても首都圏1位の船橋、5位の柏、6位の流山市(流山おおたかの森)、7位の習志野市(津田沼)と定住を目的としたファミリー層を中心に支持を受けている。
地域ごとに多様な特色を持っており、バランスの取れた産業構造(農業・漁業・工業・商業)である。太平洋ベルトを構成する京葉工業地帯(浦安市から富津市)の東京湾沿岸は都市化・工業化が進んでおり、日本三大港湾に係る基幹産業の大規模施設として、発電所、製鉄所、製油所、造船所のほか、コンテナターミナル、物流センター、LNG基地、石油コンビナートなどが立地している。新たに柏の葉地域(柏市)には東京大学・千葉大学(柏キャンパス)を中心とした公・民・学連携の新産業創造都市(柏の葉スマートシティ)が形成されている。工業製造品出荷額は中京・京浜・阪神工業地帯に次いで全国第4位である[20]。一方、酪農発祥の地である嶺岡牧や日本三大漁港の銚子漁港など、太平洋や関東平野の地勢を生かした近郊農業・漁業が発達しており、平野部では畑作・稲作が盛んなほか、丘陵部では酪農が盛んである。農業産出額は全国第3位[21]、漁業総生産量は第5位[22]と全国有数である。貿易港としても貿易額日本一の成田国際空港や、日本三大貿易港である千葉港を有する。2015年度の県内総生産は20兆2186億円であり、世界の過半数の国の国内総生産より大きな規模を有している[23]。
名称編集
「千葉」という地名は、平安時代初期に編纂された勅撰史書『日本後紀』より、律令制以前の千葉国造(国造名)や律令制以来の千葉郡(郡名)にみることができる。
地名の由来については諸説あるが、現存の文書中最も古くにみえるのは、日本に現存する最古の和歌集である『万葉集』に防人であった下総国千葉郡の大田部足人が755年(天平勝宝7年)に詠んだ遠方へ赴いた兵士が故郷に残した切ない初恋の防人歌[24]として、歌の冒頭に「知波乃奴乃(千葉の野の)」と記されている[25]。また、奈良時代の『日本書紀』と『古事記』の両書には、応神天皇が大和国から近江国に向かう途中、山城の宇治野の丘で遠く葛野一帯を望んでの国見歌で現れる「千葉の」は「数多くの葉が繁茂する」の意で、葛の葉が良く繁栄したことから葛の枕詞として用いられたのだと、契沖(国学者)以来考えられており、「千葉」という地名に託した願い「土地と子孫の繁栄を願っての地名」を知る上での重要な資料とされている[26]。
『万葉集』「第20巻4387番」より和歌の詳細については、以下を参照。
『日本書紀』「歌謡三四原歌」より和歌の詳細については、以下を参照。
『日本書紀』「歌謡三四原歌」より
- (原文)
- 知麼能 伽豆怒塢彌例麼 茂々智儾蘆 夜珥波母彌喩 區珥能朋母彌喩
- (和歌)
- 千葉の 葛野を見れば 百千足る 家庭も見ゆ 国の秀も見ゆ
- (訳)
- 千葉の葛野を眺めると、数多くの富み栄える民の家々も見える。国の中でもっとも繁栄したところにもみえる。
地理・自然編集
千葉県の県庁所在地である千葉市を中心にコンパスで円を書くと、南西諸島以外の日本列島は半径1,000キロメートル圏内にほとんど収まる位置にある。地理的特性として関東平野に含まれるが、南部は東と南を太平洋、西は東京湾と三方を海に囲まれた房総半島となっている。平野と丘陵が県土の大半を占め、海抜500メートル以上の山地がない日本で唯一の都道府県である。外洋に面していることから古来より開放的で外来文化が渡来しやすいという良い側面もあった。また、隣接する都県とは利根川、江戸川、東京湾、太平洋によって画され、古くは外敵の進入を防ぐ役割や覇者の起死回生の地としての役割を担ってきた。近年では東京湾フェリーや東京湾アクアラインの開通によって半島性が緩和されている[27]。
地勢上、広大な可住地と、長大な海岸線を有している。起伏の少ない県であり、関東平野の一部である北部は、海岸(東京湾・太平洋)や河川(利根川・江戸川など)沿いの低地と下総台地からなる。南部側は房総丘陵などの丘陵地帯だが、最高峰は標高408メートルの愛宕山であり、全都道府県のうち最高峰(点)が最も低い。そのため比較的温暖な気候に恵まれている。標高329メートルの鋸山や鹿野山等、観光地化されているところもあり、南房総国定公園、水郷筑波国定公園等、景勝地も豊富である。
房総半島の東京湾側は内房(うちぼう)、太平洋側は外房(そとぼう)と呼ばれ、東京湾沿いは埋立地が多く浦安市などでは面積が増加した。そのため、県の面積が一時、愛知県を上回っていた時期もある[注釈 3]。東京湾口には館山湾があり、浦賀水道の対岸には三浦半島(神奈川県)がある。太平洋沿いは九十九里浜が面し、九十九里平野が広がる。半島南部には房総丘陵、半島中央部には上総丘陵と上総台地 、半島北部には下総台地があり、これらの台地や丘陵には縄文期の侵食によってできた谷底平野(谷津田)も見られる。一方で半島の北部から中部にかけて下総台地を囲む形で北西に江戸川低地、西に東京湾岸低地、北に利根川下流低地、東に九十九里沖積低地が分布する。
関東地方に属する都県では唯一、関東以外の地域と隣接していない。
平均海抜は46メートルとなっており、これは沖縄県の43メートルに次ぐ低い数値である[28]。そのため、縄文海進が最大規模となった紀元前4000年頃には、現在の古東京湾(南部)と香取海(北部)によって本州と分断されており、後に赤堀川・逆川が開削される微高地で繋がっている状態であった。
印旛沼は長門川と印旛放水路の二つの川と接続しており、長門川は印旛沼から利根川へ流れる河川であるが、印旛放水路は利根川の増水時に長門川による印旛沼の排水が困難になった際に東京湾に排水を行う役目を持つのが特徴である。
県の最端部は突出しているのが特徴である。県最北端は野田市の関宿地区(関宿藩の城下町)となっており、そのほかは海に突出する岬となっている。
- 県最東端:犬吠埼(銚子市)
- 東経140度52分10秒。関東地方最東端。厳密には犬吠埼北側の君ケ浜北端の岬が東経で11秒ほど東にあり、統計上はこちらが最東端となる。犬吠埼灯台近くには、ユーラシア大陸最西端であるポルトガルのロカ岬との友好碑が建てられている。
地質編集
第三紀層および白亜紀堆積層。県内には学術的貴重な地層を数多くみることができる。代表例として最東端の犬吠埼では1億3000万年前から1億年前の恐竜時代の地層(砂岩泥岩互層)を見ることができ、白亜紀浅海堆積物として国の天然記念物に指定されており、日本の地質百選にも選定されている。
千葉セクション(市原市)では、約77万年前の地層を見ることができ、地球史上で最後の地磁気逆転(松山‐ブリュンヌ逆転)が起きた時期である更新世の前期と中期の境界を示すものとして極めて貴重であり、国際標準模式層断面及び地点 (Global Boundary Stratotype Section and Point, 略称:GSSP) の候補となった。2020年1月17日、正式に国際地質科学連合により国際標準模式層断面及び地点として認められ、77.4万年前から12.9万年前までの期間が「チバニアン」(Chibanian、千葉時代)と命名されることになった[29]。地質年代に日本の地名が使われるのは初めてである。「養老川流域田淵の地磁気逆転地層」の名称で、国の天然記念物にも指定されている。
鋸山の周辺で採石される石は房州石(ぼうしゅういし)と呼ばれ[30]、このうち鋸山頂上付近でとれるものを金谷石、元名石と呼び[31]、高宕山でとれるものを高宕石と呼ぶ。これらは、上総層群の竹岡層からなる凝灰岩でできている。上総層群は三浦半島に分布する三浦層群と同時期に形成されたことがわかっている[30]。南房総市荒川にて2009年に採石場で新鉱物(千葉石)も発見されている。
地形編集
平野・丘陵編集
河川編集
千葉県は大部分が平野部と低山で構成されているので、急な流れの川や大きな川は少なく、そのような川は多くが利根川のように他県から流れてくるものである。
利根川、夷隅川、養老川、栗山川、小櫃川、一宮川、小糸川、南白亀川、村田川、作田川、木戸川、塩田川、桑納川、手賀川
湖・沼編集
印旛沼、手賀沼、大利根用水、両総用水、成田用水、東総用水、利根運河、利根川河口堰、黒部川水門、北千葉導水路、房総導水路、行徳可動堰、江戸川水閘門(江戸川水門)
亀山湖、高滝湖、豊英湖、八鶴湖、雄蛇ケ池、三島湖、与田浦、岩婦湖、浜の池
海・海岸編集
名洗港海岸、上永井海岸、北九十九里海岸、横芝海岸、一宮海岸、太東漁港海岸、日在・和泉浦海岸、興津港海岸、東条海岸、白渚海岸、千倉海岸、館山港海岸、富山海岸、勝山漁港海岸、富津岬、木更津海岸、千葉港海岸幕張の浜・検見川の浜・いなげの浜、千葉港海岸(船橋地区)船橋港親水公園[32]
干潟編集
山編集
安房三名山(富山、御殿山、伊予ヶ岳)、愛宕山、鋸山、鹿野山、清澄山、安房高山、三郡山、嶺岡浅間、高宕山
湧水編集
千葉県内には多くの湧水地があり[33]、久留里一帯では住民が管理する複数の井戸があり、名水として知られている[34]。
熊野の清水(昭和の名水百選)、生きた水・久留里(平成の名水百選)
自然公園編集
- 国定公園
- 南房総国定公園、水郷筑波国定公園
- 県立自然公園
- 県立養老渓谷奥清澄自然公園、県立九十九里自然公園、県立印旛手賀自然公園、県立高宕山自然公園、県立嶺岡山系自然公園、県立富山自然公園、県立大利根自然公園、県立笠森鶴舞自然公園
気候編集
気象庁による年間平均気温は15.7℃(最高気温平均19.6℃、最低気温平均12.3℃[35])。
太平洋側の気候に属する。平野部が多く起伏の少ない県であり、山岳部の平均標高も低い。更に太平洋沖合いには黒潮(暖流)が流れており霜も少ない為、全体的には年間通して比較的温暖な気候に恵まれ、全域が太平洋側気候(海洋性気候)に属する。内陸性気候特有のフェーン現象や放射冷却の影響を受けにくく、真冬日の豪雪や冷害、真夏日の猛暑を観測することも少ないため、気象災害も起きにくい。
太平洋沿岸部などでは、海流や風の影響で涼しいため、真夏日日数も少ない避暑地である。一方、温暖な海洋性気候である南房総や北東部沿岸地域に対して、下総台地や山岳部(房総丘陵)等の内陸部は内陸性気候に近くなる。また近年では都市化の進行が著しく、都市部(主に県北西部)ではヒートアイランド現象が発生している。
天気予報などで示される地点は、気象台や旧測候所(現在の特別地域気象観測所)のある銚子市(北東部)、千葉市(北西部)、勝浦市(南東部)、館山市(南西部)といずれも海洋性の気候が強い地点であるため、県内内陸部の気温とは大きくかけ離れている点も少なくない。
県北西部から北東部にかけての内陸地域で、内陸性気候の特色が強い。千葉市の若葉区などの内陸部も含まれる。特に、佐倉市や成田市、香取市周辺にかけては筑波颪が吹き付けるために県内で最も寒さの厳しい地域である。1月の平均最低気温は成田が-2.4℃、佐倉で-2.0℃まで下がり、時には-5℃から-8℃前後まで下がることもある。
柏市、松戸市、我孫子市、流山市、野田市、鎌ヶ谷市などが属し、湾岸部に並ぶ人口密集地である。市川市や船橋市などの葛南地域の内陸部もここに該当する。内陸に位置しているため沿岸からの暖気の吹き込みに影響されにくいという点から、時に南岸低気圧通過時には県内で唯一、雨に変わらずに雪のまま推移することで積雪を記録することもある。
近年はヒートアイランド現象の影響で都市部を中心として、冬の冷え込みが和らぐ一方、夏は熱帯夜になりやすくなっており、東京都心の気候と類似する。千葉県北西部の天気予報は一括して旧千葉測候所の天候が基準となるために、東葛地域の実際の天候・気温とは異なることも多い。そのため、2002年には気象庁予報警報区分では二次細分区域として「東葛飾」[注釈 4]という区分が誕生した。
浦安市から市川市、船橋市、千葉市、市原市までの東京湾に隣接した沿岸地域を示す。農地が少なく、県内では県北西部と並び人口密度が高い地域である。そのため、夏は熱帯夜になることもあり、冬は氷点下になることが少ないなど県内で最もヒートアイランドの影響を色濃く受けており、東京都心沿岸部の気候と類似する。千葉市の1月の最低平均気温は1.9度で、これは南房総の鴨川1.5℃や館山1.0℃よりも高く、銚子2.7℃、勝浦2.6℃に次いで3番目の高さとなっている。千葉県北部が南岸低気圧による雪の時、千葉市は雪や霙、市原市では雨や霙の場合が多い。
九十九里浜に沿って太平洋に面した地域で、海洋性気候となり千葉県の中でも年中温暖な気候である。特に銚子市の夏は関東平野部の中では最も涼しく、冬の最低気温も県内で最も高い。そのため夏は避暑地に、冬には避寒地として多くの観光客が訪れる。ヒートアイランドの影響が少ないため、少し内陸に入ると冬季は冬日になることも多い[注釈 5]。冬季の南岸低気圧通過時はこの地域には暖気を巻き込むことが多いため、積雪となることは非常に少ない。また、全般に夏は冷涼ながらも、茂原市などの南部内陸部は夏の日中県内でも暑くなりやすい。
南部は温暖な気候と一括されがちであるが、実際には、温暖な沿岸部と寒冷な内陸山岳部(房総丘陵)に二分され、さらに外房(太平洋側)と内房(東京湾側)で気候は異なる。
内陸山岳部は標高の高い丘陵地帯であるため、年間の寒暖の差は大きく内陸性気候となる。冬は、アメダス地点の市原市(牛久)や君津市(坂畑)などの標高の高い内陸部では1月と2月の平均最低気温は氷点下であり、冷え込むことが多く、標高が高い山々では、時に大雪となることがある。市原市(牛久)では内陸性の気候であり、県内の中でも猛暑日を記録することが多い。しかし、朝晩は涼しく熱帯夜は少ない。君津市(坂畑)は亀山湖に近い立地からか夏も涼しく、標高120メートル程の場所としては冷涼な地点のひとつである。
一方、温暖な沿岸部、特に南房総地域は黒潮海流の影響で気候は年間通して温暖で、夏には多くの海水浴場が開設され、冬には避寒地として多くの観光客が訪れる。外房沿岸地域は特に温暖で、霜が降りることはあまりなく、南房総市の南端部は関東で最も春の訪れが早い地域である。一方、内房は外房ほどの温暖さはなく、館山特別地域気象観測所では、1月の平均最低気温が1.0℃と千葉市より低く、冬日を観測することもある。気象区分では南部に属するものの、木更津市などは千葉市の気候とほとんど変わらない。
夏は、外房の御宿町や勝浦市などでは海流や風の影響で涼しく、勝浦の8月の平均最高気温は28.8℃にしかならず、過去に猛暑日を記録したことはなく、真夏日日数も少ない避暑地でもある。
下総台地 | 東葛地域 | 京葉地域 | |||||||||||||
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北東部 | 南部 | ||||||||||||||
佐倉 | 香取 | 成田[36] | 我孫子 | 船橋 | 千葉 | 銚子 | 横芝光 | 茂原 | 市原市 牛久 |
君津市 坂畑 | |||||
勝浦 | 鴨川 | 館山 | |||||||||||||
平均 気温 (℃) |
最暖月 | 25.6 (8月) |
25.1 (8月) |
25.3 (8月) |
25.9 (8月) |
26.5 (8月) |
26.7 (8月) |
24.9 (8月) |
25.6 (8月) |
26.0 (8月) |
25.9 (8月) |
24.8 (8月) |
25.3 (8月) |
25.8 (8月) |
26.1 (8月) |
最寒月 | 3.3 (1月) |
3.6 (1月) |
3.6 (1月) |
3.7 (1月) |
4.9 (1月) |
5.7 (1月) |
6.3 (1月) |
4.3 (1月) |
4.9 (1月) |
4.0 (1月) |
3.4 (1月) |
6.4 (1月) |
6.0 (1月) |
6.2 (1月) | |
降水量 (mm) |
最多月 | 200.8 (9月) |
288.2 (10月) |
214.8 (9月) |
207.9 (9月) |
232.6 (10月) |
200.4 (9月) |
226.5 (9月) |
188.6 (9月) |
217.0 (9月) |
237.7 (9月) |
257.4 (9月) |
249.5 (9月) |
217.4 (9月) |
222.1 (9月) |
最少月 | 38.8 (12月) |
64.8 (2月) |
50.7 (12月) |
34.1 (12月) |
55.2 (2月 |
51.5 (12月) |
70.3 (12月) |
41.0 (12月) |
44.7 (12月) |
47.7 (12月) |
65.0 (12月) |
73.0 (12月) |
59.0 (12月) |
66.6 (12月) |
動植物編集
- 陸の動植物
房総半島南部にはニホンザルやニホンジカが生息している。一方、他県に見られるクマなどは生息していない[37]。
以下は房総の陸上に生息する主要な動植物である[38][39]。
海・川の動植物編集
三方を海で囲まれた地形であり、地形・海流の関係により多様な生態系が築かれている。
東京湾は閉鎖性水域と呼ばれる、海水の流出入量が少ない海域である。複数の河川が注ぎ、富栄養化が進んでいる影響で、赤潮や青潮などの現象が度々発生している。湾奥の三番瀬や、富津干潟、盤州干潟などの広大な干潟が現在も残る。これらの干潟にはアサリやバカガイなどの貝が生息し、春から夏にかけて潮干狩りが行われている。アシハラガニやガザミといった甲殻類から、アジサシやカワウなどの鳥類も生息[41]する。小櫃川河口には環境省のレッドリストにて絶滅危惧IB類に指定されている東京湾固有種のキイロホソゴミムシが生息し[42]、アシ原(ヨシ原)を形成しているアシ(ヨシ)をはじめ、ハマダイコンなどの植物やアマモなどの海藻が生息する[43]。
富津市と鋸南町の境界付近にある明鐘岬周辺より南の海域からは、わずかながらサンゴが生息している[44]。これは、黒潮の影響を受けた海水温と透明度の高い海水が流入するためである。そしてこの近辺からは東京湾海底谷が広がり、メガマウスやミツクリザメなどの貴重な深海生物が多く生息している。館山市周辺海域には造礁サンゴが分布している[45]。日本は黒潮の暖かい海流により世界的に見て造礁サンゴが広い範囲に分布しているが、その中で館山の造礁サンゴは北限とされている。
そのほか東京湾および館山湾周辺にはスズキやメバルにイイダコ、アカエイなど豊富な魚類が生息している。
館山周辺の沿岸から夷隅地区はイセエビが豊富に生息しており、いすみ市および県全体では漁獲高全国1位である。鴨川市には特別天然記念物にも指定されている鯛の浦がある。これは群泳せず浅い海を泳がないマダイが群泳する姿を、海面近くでみることができるためである[46]。
房総半島は標高が低いこともあり、水温の低い谷川はない。そのため、カワゲラやカゲロウは全体として少なく、ヤマメや大卵型のカジカは生息していない[38]。
- 外来生物
勝浦市にはかつて行川アイランドと呼ばれる観光地があり、この施設から逃げ出したとされるキョンが勝浦市周辺で繁殖しており、県内には数千頭生息しているとされている[47]。また盤洲干潟や富津干潟などにはサキグロタマツメタと呼ばれる貝が流入している[48]。これは本来、中国近海の干潟や瀬戸内海などにしか生息していない貝であったが、中国などからのアサリの輸入に際して混入してきたとされる。この貝はアサリなどの二枚貝を捕食するため、在来種であるツメタガイとともに干潟の多くのアサリの天敵となっている[49]。
歴史編集
地域と人口編集
地域区分編集
県下には、37市6郡16町1村がある。自治体における町はすべて「まち」、村は「むら」と読む。県庁による地域区分には、4地域の分類と、県庁および地域振興事務所の所管区域による6区分とがある。県の総人口は6,275,572人。人口は、2021年12月1日現在の推計人口である。
合計特殊出生率は1.32と、全国の1.42を下回っている(2014年)ものの東京都市圏(1都3県)の中では高い水準である。人口は千葉市や東京23区に近い船橋市、市川市、松戸市、流山市、浦安市、八千代市、柏市を中心に急増しているのに対し、県東部など東京通勤圏最外縁部に位置する市町村では減少傾向にある。そのため総人口の増減では横ばいになっている。千葉県では、今後予想される人口減少や高齢化に対して危機感を持ち、早期段階で子育て支援や労働力確保に力を入れている[50]。
4地域区分編集
- 中央地域 2,055,961人
- 西地域 3,172,352人
- 東地域 306,464人
- 南地域 740,795人
県庁・地域振興事務所の所管区域編集
- 千葉・市原(県庁直轄) 1,220,438人
- 葛南地域振興事務所(船橋市)所管区域 1,561,048人
- 東葛飾地域振興事務所(松戸市)所管区域 1,416,364人
- 印旛地域振興事務所(佐倉市)所管区域 882,844人
- 香取地域振興事務所(香取市)所管区域 117,839人
- 海匝地域振興事務所(旭市)所管区域 184,548人
- 山武地域振興事務所(東金市)所属区域 221,009人
- 長生地域振興事務所(茂原市)所管区域 157,782人
- 夷隅地域振興事務所(大多喜町)所属区域 81,418人
- 安房地域振興事務所(館山市)所属区域 138,529人
- 君津地域振興事務所(木更津市)所管区域 321,346人
- 千葉・市原 1,245,084人
- 千葉市、市原市
- 葛南 1,687,418人
- 市川市、船橋市、習志野市、八千代市、浦安市
- 東葛飾 1,523,988人
- 松戸市、野田市、柏市、流山市、我孫子市、鎌ケ谷市
- 北総 715,672人
- 佐倉市、四街道市、白井市、印西市、成田市、八街市、富里市、印旛郡
- 香取 103,083人
- 香取市、香取郡
- 海匝 154,145人
- 銚子市、旭市、匝瑳市
- 東上総 142,182人
- 茂原市、長生郡
- 山武 195,878人
- 東金市、山武市、大網白里市、山武郡
- 夷隅 66,759人
- 勝浦市、いすみ市、夷隅郡
- 南房総 323,391人
- 木更津市、君津市、富津市、袖ケ浦市
- 安房 117,972人
- 館山市、鴨川市、南房総市、安房郡
人口編集
千葉県と全国の年齢別人口分布(2005年) | 千葉県の年齢・男女別人口分布(2005年) |
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千葉県の人口の推移 | |
総務省統計局 国勢調査より |
県内市町村人口。人口は2021年12月1日現在、世帯数は2010年3月1日現在[51]
市町村 | 総数(人) | 世帯数(世帯) | 特筆事項 | |
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1 | 千葉市 | 977,657 | 402,402 | 政令指定都市(1992年4月1日) |
2 | 銚子市 | 56,826 | 26,527 | |
3 | 市川市 | 495,677 | 218,098 | |
4 | 船橋市 | 644,602 | 257,727 | 中核市(2003年4月1日) |
5 | 館山市 | 44,567 | 20,431 | |
6 | 木更津市 | 136,273 | 48,447 | |
7 | 松戸市 | 496,652 | 210,447 | |
8 | 野田市 | 152,191 | 57,250 | |
9 | 茂原市 | 86,264 | 35,484 | |
10 | 成田市 | 131,402 | 52,310 | |
11 | 佐倉市 | 167,088 | 65,608 | |
12 | 東金市 | 57,579 | 23,585 | |
13 | 旭市 | 62,979 | 23,343 | |
14 | 習志野市 | 176,465 | 67,996 | |
15 | 柏市 | 430,072 | 158,131 | 中核市(2008年4月1日) |
16 | 勝浦市 | 16,441 | 8,695 | |
17 | 市原市 | 267,427 | 111,587 | |
18 | 流山市 | 204,846 | 64,614 | |
19 | 八千代市 | 201,100 | 72,919 | |
20 | 我孫子市 | 130,244 | 53,529 | |
21 | 鴨川市 | 31,685 | 14,320 | |
22 | 鎌ケ谷市 | 109,983 | 41,518 | |
23 | 君津市 | 81,235 | 33,905 | |
24 | 富津市 | 41,596 | 17,357 | |
25 | 浦安市 | 169,574 | 72,254 | |
26 | 四街道市 | 94,231 | 32,710 | |
27 | 袖ケ浦市 | 64,287 | 22,228 | |
28 | 八街市 | 66,606 | 26,596 | |
29 | 印西市 | 104,697 | 29,542 | |
30 | 白井市 | 61,999 | 21,220 | |
31 | 富里市 | 49,236 | 20,037 | |
32 | 南房総市 | 34,988 | 15,935 | |
33 | 匝瑳市 | 34,340 | 13,225 | |
34 | 香取市 | 71,038 | 27,344 | |
35 | 山武市 | 47,582 | 19,571 | |
36 | いすみ市 | 34,913 | 15,056 | |
37 | 酒々井町 | 20,534 | 8,572 | |
38 | 栄町 | 19,879 | 8,120 | |
39 | 神崎町 | 5,700 | 2,212 | |
40 | 多古町 | 13,389 | 5,313 | |
41 | 東庄町 | 12,956 | 4,644 | |
42 | 大網白里市 | 47,808 | 18,193 | |
43 | 九十九里町 | 14,261 | 6,483 | |
44 | 芝山町 | 6,919 | 2,510 | |
45 | 横芝光町 | 21,729 | 8,124 | |
46 | 一宮町 | 11,902 | 4,467 | |
47 | 睦沢町 | 6,693 | 2,449 | |
48 | 長生村 | 13,616 | 4,995 | |
49 | 白子町 | 10,098 | 4,345 | |
50 | 長柄町 | 6,555 | 2,676 | |
51 | 長南町 | 7,054 | 2,908 | |
52 | 大多喜町 | 8,642 | 3,651 | |
53 | 御宿町 | 6,763 | 3,184 | |
54 | 鋸南町 | 6,732 | 3,513 |