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操作方法は関数型玩具製作所

スピン角運動量 - Wikipedia

スピン運動

粒子持つ固有運動
スピン量子から転送
物理 > 量子力学 > オブザーバブル > スピン運動

スピン運動スピンかくうんどうりょう: spin angular momentum量子力学概念粒子持つ固有運動ある単にスピン呼ばれる粒子運動スピン以外粒子回転運動由来する運動ある軌道運動存在スピン軌道運動角運動量呼ぶここいう粒子電子クォークなど素粒子あっハドロン原子核原子など複数素粒子から構成れる複合粒子あっよい

スピンという名称この概念粒子自転ようもの捉えられという歴史理由によるものある現在このよう解釈正しい考えられないなぜならスピン古典極限 ħ0において消滅するスピン概念に対し自転はじめ古典解釈付け加える全く無意味からある[1]:p196

量子力学物理同様スピン運動演算用い定義れるこの演算(スピン運動演算)スピン回転方向対応定義x y z 方向スピン演算それぞれ書き表すこれら演算固有値これら演算対応するオブザーバブル観測ときられる整数もしくは整数ある s 0 用い

書き表せる s 粒子のみ依存決まりスピン演算方向依存決まる知らいるこの s 粒子スピン量子いう

スピン量子整数 1/2, 3/2, なる粒子フェルミオン整数 0, 1, 2, なる粒子ボゾンいい両者物理性質大きく(詳細それぞれ項目参照)。2016現在知らいる範囲において

  • フェルミオンある素粒子スピン量子全て 1/2 ある
  • ボゾンある素粒子ヒッグス粒子のみスピン量子 0 ありそれ以外ボゾン素粒子スピン量子 1 ある
  • 複合粒子スピン量子それ以外取りうる単純複合粒子構成する素粒子スピン量子合計なるわけない例えばヘリウム原子スピン量子 0 あるこれ構成する素粒子ある電子クォークいずれフェルミオンありしたがってそのスピン量子整数ある

相対量子力学においてスピン運動それ以外オブザーバブル大きく振る舞いするスピン運動記述するためだけ理論修正迫られるそれに対し相対量子力学例えばディラック方程式定義それ自身スピン概念織り込まいるなどより自然スピン定式れる

本稿以下特に断りない限り相対量子力学に対するスピン概念について述べる

準備編集

本節まず回転ユニタリについて紹介次にこれら概念使っ軌道運動概念回転対称観点から定式する本節軌道運動概念復習する次節以降軌道運動定義参考ながらスピン運動概念定式するある

数学準備編集

スピン運動演算定義必要数学知識簡単述べるR実数全体集合C複素数全体集合する3次元空間R3における回転行列全体集合

表記するここ n n 行列全体集合ありI 単位行列ありtR R 転置行列あるSO(3) 行列に関してなすのでSO(3) 3次元回転いう

SO(3) よう滑らか構造持っリーという厳密定義リー項目参照特にSO(3) よう行列からなるリー行列リーあるいは単に行列いう登場するリー以下行列限られるそこでリー一般展開する避け以下行列限定すすめる 以下V複素計量ベクトル空間ありI単位行列ありA*Aエルミート共役ある

3次元回転群 (G1)
ユニタリ線形写像 (G2)
特殊ユニタリ線形写像 (G3)

ベクトル空間VCnある場合U(V)、SU(V)それぞれU(n)、SU(n)表記する

GSO(3)、U(V)、SU(V)いずれするとき集合

G 上の可微分な曲線でt=0 のとき単位行列となる (G4)

Gリー呼びG無限変換呼ぶリーという名称行列交換

に関してなすからあるSO(3)、U(V)、SU(V)リーそれぞれ

(G5)
V線形写像Vエルミート演算 (G6)
V (G7)

あるso(3)上述なる以下理由よるR(t)SO(3) 微分曲線t=0 とき単位行列なるものするSO(3) 定義より

なのでその t = 0 微分

満たすあるu(V)、su(V)上述なる同様方法証明できるなおここV有限次元場合想定無限次元ヒルベルト空間場合同様成立する

so(3)、u(V)、su(V)いずれ行列に対しexp(A)

(G8)

定義する成立する

Aso(3)、u(V)、su(V)あれexp(A) それぞれSO(3)、U(V)、SU(V)ある (G9)
(G10)

SO(3) に関して上述性質更に具体書き表すできる3次元ベクトル x = (x, y, z) R3に対しso(3)属する行列Fx

(G11)

定義する[2]:p344[3]:p36成立する[3]:p36

exp(Fx) x する回転行列回転に対して回り ||x|| ラジアンある (G12)
(G13)

ここ×クロスあるGHSO(3)、U(V)、SU(V)いずれGHリーするすなわちso(3)、u(V)、su(V)いずれある

GからH微分同型写像するこのときπ誘導する写像π*

(G14)

により定義するこの写像well-definedなるしかもこの写像リーとして同型写像なること知らいるすなわち

(G15)

ある

π誘導する写像π*行列指数関数exp以下関係満たす

任意に対し (G16)

空間回転対称から軌道運動演算編集

相対量子力学において波動関数全体集合ヒルベルト空間 として記述可能ありスピン考慮ない粒子からなる場合 3次元ユークリッド空間 R3 L2 空間等しいすなわち

ある

軌道運動演算空間回転に対する対称として導出れる[1]:p73 そこで軌道運動演算導出するため回転行列によって波動関数どのよう変化する調べる3次元回転行列全体なすリー SO(3) 書くとき回転行列 R SO(3) により座標回転とき波動関数 ϕ(x) ϕ(R1x) 移動するすなわち回転行列 R SO(3) に対し波動関数空間 ユニタリ演算

定義れる[3]:p37[2]:p396 Def 17.1

複素計量ベクトル空間Vユニタリ演算全体なすU(V)するとき回転行列 R に対し複素 クトル空間 ユニタリ演算 λR 対応せる連続同型写像

SO(3) ユニタリ表現いう

一方SO(3) 対応する無限変換全体集合 so(3) (G1)よう定義(G14)に従ってλ誘導する写像λ*

上の

そこで単位ベクトル n = (x, y, z) R3に対しFn(G11)よう定義虚数単位 i 換算プランク定数ħ用い

  (J1)

定義するL2(R3)エルミート演算なるこの演算無限回転Fn対応する演算[1]:p73ありこの演算 n = (x, y, z) R3周り軌道運動演算呼ぶ

例えば z 周り軌道運動 球面座標 (r, θ, φ) 用い

表記できる以下よう確認できるψ任意波動関数する(G10)、(G12)より

さらに x y 周り軌道運動それぞれFx=F(1,0,0)Fy=F(0,1,0)Fz=F(0,0,1)する(G15)、(G13)より交換関係

従う

2に関する軌道運動演算SO(3) ユニタリ表現 λ によって結ばれるすなわちR 回転行列 z w 移すものするw 周り軌道運動 合成写像

ある

スピン考慮場合波動関数空間 数学定式編集

前節まで述べよう軌道運動演算粒子位置表す(x,y,z)による3次元空間回転対称として定義できるそれに対しスピンそのよう定式できない様々物理実験からスピン(x,y,z)独立粒子内部自由ある知らいるからあるこれ原因スピン考慮場合波動関数全体なすヒルベルト空間 粒子あっ L2(R3) 等しくならない

したがってスピン記述するスピン状態ベクトル空間Vs L2(R3)別個用意

考える必要ある[4]ここ添字s 0整数もしくは整数ありVs2s+1 次元複素計量ベクトル空間ある

粒子波動関数空間 上述よう表記できるときs その粒子スピン量子という[2]:p384Vs スピノール空間[3]:p50Vs スピノールいうs 整数ない整数なるときその粒子フェルミオンいいs 整数なるときその粒子ボゾンいう

スピン考慮波動関数表示方法編集

多く物理教科書スピン考慮波動関数通り方法表記するそこで次にこの通り表記方法紹介する

成分表示編集

テンソル積の定義より波動関数

     (B1)

という成分表示できるここL2(R3)ありσjVsあるそこで

定義すれ

あるこのよう表記するスピン表すスピノールσj(x,y,z)独立内部自由あるわかりやすい

スピノール表示編集

スピン考慮波動関数ψ成分表示(B1)角度から解釈するスピン考慮波動関数ψに対しψ'(x,y,z)

定義するできるなおベクトルσjによるスカラーあるスピン考慮ない通常波動関数1次元複素計量ベクトル空間C取るに対しψ'(x,y,z)2s+1次元複素計量ベクトル空間Vs取る波動関数あるみなせるスピン考慮波動関数ψVs取る波動関数みなしものψスピノール表示いう

多く物理教科書Vs成分表示紹介いるes, e−(s 1), , es 1, es Vs基底するときψ'(x,y,z)必ず

表記できるのでψ'(x,y,z)ベクトル

成分表示できる

なお基底 es, e−(s 1), , es 1, es 通常何らかのに関するスピン演算対応固有ベクトルする

スピン考慮場合オブザーバブル編集

量子力学においてスピン考慮ない場合オブザーバブルL2(R3) エルミート演算として定式いるスピン考慮場合この演算

同一するスピン考慮波動関数空間オブザーバブルみなす(ここid恒等写像ある)。

後述するようスピン運動演算Vsエルミート演算として定式できるこれ同種によりオブザーバブルみなすすなわち何らかのに関するスピン運動するとき

同一する

Vs ユニタリ表現に関する問題編集

軌道運動演算無限回転に対する演算として定義可能あっ同様スピン運動演算 Vs に対する無限回転に対する演算として定義するできるしかしながら軌道運動演算定義における単純 Vs 置き換えだけスピン運動演算定義できないこれ理由よる

軌道運動演算場合3次元回転行列 SO(3) ユニタリ表現

t に関して微分する軌道運動演算定義

したがって軌道運動演算定義において単純 Vs 置き換えスピン運動演算定義しよするSO(3) Vs ユニタリ表現必要なるしかしながらそのよう表現常に存在するわけないこと知らいる[2]:p375 Thm 17.10

定理1  成立する

  • s整数場合SO(3) Vs ユニタリ表現(同型除い一意)存在する
  • s 整数ない整数場合SO(3) Vs ユニタリ表現存在ない

すなわち上述方法s 整数場合に対してスピン運動演算定義するできないこの問題解決方法2あり後述するよう2本質同値ある

射影ユニタリ表現用い解決編集

一つ解決方法 Vs 直接考えるなくVs 位相相違無視する同値関係[2]:p368

割っ空間

考え同様ユニタリ演算に対して同様同値関係

により同一同値 [U] 考えるというものある[2]:p369このユニタリ演算同値全体集合

表記するPU(Vs) Vs 射影ユニタリPU(Vs) 属する同値 Vs 射影ユニタリ演算呼ぶ

射影ユニタリ演算 [U] Vs / 写像なる知らいる

そこでスピン演算振る舞い記述するためSO(3) ユニタリ表現代わり SO(3) 射影ユニタリ表現

用いる

通常ユニタリ表現違い射影ユニタリ表現満たす知らいる[2]:p383-384

定理2  s 整数あっ整数あっSO(3) Vs 射影ユニタリ表現(同型除い一意)存在する

よってユニタリ表現代わり射影ユニタリ表現利用するスピン運動演算定義可能ある

本稿射影ユニタリ表現利用スピン運動演算定義詳細述べないこれ射影ユニタリ表現使っスピン演算記述いる物理教科書少ないあるしかしすで述べよう射影ユニタリ表現による解決方法後述するもう一つ解決方法本質同値のでもう一つ解決方法利用スピン運動演算定義から射影ユニタリ表現利用スピン運動演算定義導くことできる

射影ユニタリ表現による解決方法物理意味持たないフェーズ同一除けオブザーバブル類似形式スピン運動演算記述できるため後述するもう一つ解決比べその物理意味わかりやすい利点ある

スピン用い解決方法編集

今一つ解決SO(3) 代わり3次元スピン Spin(3) 用いるというものあるそこでまずスピン定義性質紹介するn 次元スピン以下性質満たす連結行列あるこのよう性質満たす連結行列同型除い1しか存在ない知らいる

微分同型写像 Φn: Spin(n) SO(n) 2:1 なるもの存在する   C1

ここSO(n)n次元回転行列なすあるスピン運動定義必要次元3場合スピンSpin(3)ありSpin(3)2次元特殊ユニタリ変換 SU(2) 同型こと知らいる

したがって以下特に断りない限り Spin(3) SU(2) 同一する

スピン定義より回転行列 R 何らかのスピン U 用い

書くことできるこれすなわち回転行列 R 直接扱う代わりスピン U により回転記述可能意味するそこで SO(3) ユニタリ表現代わり Spin(3) ユニタリ表現考えるSO(3) ユニタリ表現違いSpin(3) ユニタリ表現以下満たす[2]:p383-384:

定理3  s整数あっ整数あっSpin(3) Vs ユニタリ表現(同型除い一意)存在する

よって SO(3) ユニタリ表現代わり Spin(3) ユニタリ表現利用するスピン運動演算定義可能ある詳細後述する

2解決方法同値編集

上述2解決方法本質同値あるこれ Spin(3) ユニタリ表現 SO(3) 射影ユニタリ表現自然11対応するある具体πs(S) スピン S Vs ユニタリ表現γ(R) 回転行列 R Vs 射影ユニタリ表現する適切同型もの置き換えれ以下図式なるここ proj 同値取る写像

スピン定義用いる空間関数具体表記編集

以上議論によりSpin(3)=SU(2)用いるスピン運動定義できるわかっそこで本節スピン運動定義必要なる

  • スピノール空間Vs
  • 定理3述べSpin(3)=SU(2)ユニタリ表現
  • Spin(3)=SU(2)からSO(3)への写像

など具体書き表すただし本節Vsπsに関して最も重要s=1/2場合述べる留めるそれ以外sに関して参照たい

スピン1/2場合Vsπs具体表記編集

M2, 2(C) 複素正方行列全体集合I 単位行列するときSpin(3) = SU(2)2次元ユニタリ変換全体集合

部分集合あるしたがって

(H1)

定義する包含写像

Spin(3) = SU(2) V1/2 ユニタリ表現なっいるこのユニタリ表現定理3述べユニタリ表現 s=1/2 場合相当いるすなわち

(H2)

無限変換集合spin(3)=su(2)具体表記編集

軌道運動定義するSO(3)無限変換集合so(3)必要なっ同様理由スピン運動定義Spin(3) = SU(2) 無限変換全体集合spin(3)=su(2)用いるので本節その具体基本性質調べる(G4)、(G7)より

Spin(3)=SU(2) 上の可微分な曲線でt=0 のとき単位行列となる.  ...(L1)

あるsu(2) 内積

   L2

定義する[5]su(2) 3次元自由持っ計量ベクトル空間あるみなせる

次にsu(2) 基底について述べるパウリ行列 σ1, σ2, σ3

(L3)

により定義su(2)X1X2X3

   ....(L4)

により定義する[3]:p39-40[6]:p31,73(L1)、(L2)より成立することわかる

X1X2X3spin(3) = su(2) 正規直交基底ある[3]:p39-40[6]:p31,73    ...(L5)

そこで3次元ベクトルx=(x, y, z)∈R3に対し

    (L6)

定義する写像

により spin(3) = su(2) 計量ベクトル空間としてできるしかもこの同一において以下成立する[6]:p65

ここ×クロスあり[A,B] = AB-BA交換ある

Spin(3)具体表記編集

Spin(3) = SU(2) α, β 実数用い

(X1)

書き表すことできる簡単計算から従う[3]:p38[6]:p65

一方n=(x, y, z)∈R3単位ベクトルパウリ行列使っ

 (X2)

定義する簡単計算により

わかるよって行列Aに対する指数関数exp(A)(A3)よう定義するτ [0,2π]に対し

...(X3)

従う[6]:p28-29

する(L4)述べspin(3)=su(2)基底用いスピンよう書き表すできる(X1)、(X2)、(X3)からわかる

Spin(3)=SU(2)任意U単位ベクトルn=(x, y, z)∈R3
θ∈[0,4π]
用い
表記可能あるしかもSI, Iあれこのよう表記できるnθ一意ある ...(X4)

Spin(3) から SO(3) 同型写像 Φ3編集

述べようsu(2) 3次元計量ベクトル空間のでR3同一できるU Spin(3) = SU(2)に対しUYU1ある簡単計算からわかるしかも線形写像Φ3(U)

定義するΦ3(U)(L2)定義内積空間向き保つ簡単計算確かめられるすなわちΦ3(U)回転変換あるのでΦ3(U)∈SO(3)ある

以上によりSpin(3) から SO(3) 同型写像

定義できこの Φ3具体表記述べる

Φ3誘導する写像(Φ3)*定義その具体表記編集

(G14)に従いΦ3誘導する写像(Φ3)*

(D1)

により定義するこのとき(Φ3)*

(D2)

満たす[3]:p43[6]:p73成分書け

ある特に

(D3)

同型写像ある

Φ3具体表記編集

(G16)、(D2)より

(E1)

ある(X4)よりSpin(3)何らかのθ∈[0,4π]用いexp(θXx)書けるのでによりΦ3振る舞い完全記述可能ある

しかも

あるのでスピン定義(C1)述べΦ32:1写像あるという事実確認できる

Spin(3)=SU(2)成分表示(X1)用いるΦ3下記よう表示できること知らいる[6]:p74

スピン運動演算定義性質編集

スピン運動演算定義編集

以上準備スピン運動定義する

Spin(3)=SU(2) Vsユニタリ表現するそのようユニタリ表現存在同型除い一意定理3保証れるなお s=1/2 に対するVsπs (H1)、(H2)すでに記載それ以外sに対するVsπs 次節以降後述する

さらに

(C1)述べSpin(3) から SO(3) 2:1 写像するこの写像具体(E1)参照これら写像する以下とおりあるここ記号Gベクトル空間V行列ある意味するすなわちGV作用する

πs 誘導する写像 (πs)*以下よう定義する

上のエルミート演算子 (F1)

同様 Φ3 誘導する(Φ3)* (D1)よう定義する(Φ3)* (D2)よう書け(D3)より

ある

単位ベクトル n = (x, y, z) R3に対し無限回転 Xn su(2) (L6)よう定義合成写像

上の歪エルミート演算子上のエルミート演算子

によって定まるエルミート演算

(F2)

考える(D2)より

書けるので3次元空間無限回転Fn対応する演算みなせる

このn回転もつスピン運動演算呼ぶ[3]:p50-51,60[7]

スピン運動演算性質編集

交換関係編集

x(1,0,0)y(0,1,0)z(0,0,1)を回転軸に持つスピン角運動量演算子をとすると

なるよって(G15)より軌道運動同様以下交換関係成り立つ

回転変更編集

次に回転異なるスピン運動関係見るnmR32単位ベクトルnm回転行列Rにより

移り合っする写像Φ3  : Spin(3)=SU(2) SO(3)あるので

満たすU存在する

スピン角運動量演算子はその定義よりVs両者は

という関係結ばれるここ右辺πs(U)行列としてある

スピン1/2場合具体表記編集

スピン量子s1/2ある場合スピノール空間(H1)より

あり単位ベクトル n = (x, y, z) R3回転持つスピン運動演算(H2)、(L6)、(F1)、(F2)より

あるよって特に

n

持つ

それぞれ規格固有ベクトルとおりなる

Spin(3)ユニタリ表現運動編集

本節3次元スピンSpin(3)=SU(2)ユニタリ表現について詳細述べこれ土台として軌道運動スピン運動およびそれらある角運動量性質調べる

軌道運動角運動量スピンによる表記編集

n3次元空間単位ベクトルするときn回転持つ粒子軌道運動SO(3)ユニタリ表現λ誘導する写像λ*同型写像用い

上のユニタリ演算子

表記できる(J1)(D2)から従うここ関数合成ある粒子スピン運動(F2)から

上の歪エルミート演算子

定義

n

上の歪エルミート演算子

定義する

と表記できる

上のユニタリ演算子

誘導する写像あるので粒子に対する軌道運動スピン運動角運動量いずれ

(Spin(3)ユニタリ表現誘導する写像)(Xn)   (K1)

という書けいるわかる

複数粒子に対する軌道運動スピン運動角運動量粒子ものとして表記できるのでやはり(K1)表記できるわかる

よってSpin(3)ユニタリ表現具体特定するできれ粒子もしくは複数粒子に対する軌道運動スピン運動角運動量具体書き下すできるそこでSpin(3)ユニタリ表現具体書き下しSpin(3)ユニタリ表現使っ(K1)表記できる演算性質調べる

Spin(3)ユニタリ表現編集

u0整数もしくは整数Wu2u+1次元複素計量ベクトル空間する具体

  • 粒子スピン運動考える場合u=sWuスピノール空間Vs
  • 粒子軌道運動考える場合WuL2(R3)2u+1次元部分空間
  • 粒子角運動量考える場合Wu2u+1次元部分空間

想定いる複数粒子場合同様ある定理1よりSpin(3)Wsユニタリ表現同型除い一意存在するのでこのユニタリ表現

表記する(H1)、(H2)すで述べよう

ある

一般uに対するWuDuW1/2D1/2から構成できる[8]:p25-27

Wu構成編集

対称テンソル編集

Wu構成する準備として対称テンソル定義するW1/22uコピーテンソル

を考えの元に対しψ

 (M1)

により定義するここ置換あるすなわちjに対し添字入れ替えもの全て(2u)!割っものあるこのよう定義well-definedある対称テンソル対称テンソル呼び対称テンソル全体なす部分ベクトル空間

表記するe0e1W1/2=C2基底

と定義するとE0E2sの基底となるしたがって2u+1次元である

定義編集

Wu

   (M2)

定義する[8]:p25-27

Du構成編集

USpin(3)に対し

により定義すると上の内積を保つ線形写像である明らかには対称テンソルを対称テンソルに移すのでへの制限写像を

(N1)

定義する

内積保つのでこれ

意味するこの写像求めるべきユニタリ表現ある[8]:p25-27

オブザーバブルその性質編集

本節前節定義Spin(3)ユニタリ表現Du用いオブザーバブル定義そのオブザーバブル性質調べる

オブザーバブル編集

誘導する写像

3次元空間単位ベクトル用いオブザーバブル

定義できるここi虚数単位ありXn(L6)定義ものある具体

  • WuVsu=sは一粒子のスピン角運動量演算子
  • WuL2(R3)2u+1次元部分空間のときはは一粒子の軌道角運動量演算子
  • Wu2u+1次元部分空間のときはは一粒子の全角運動量演算子

ある

(Du)*具体書き表すU(t)

満たすよう取るライプニッツルール(N1)より

あるここI常に単位行列I返す写像ある

固有状態編集

スピン1/2とき同様議論によりオブザーバブルD1/22つ固有値

持つのでこれら対応する固有状態それぞれk = u, −(u 1), , (u 1), uに対し

(P1)

する[8]:p25-27

ここc(k)正規定数[8]:p25-27

(P2)

すると

なのでEn,k固有値対応する固有状態ある

昇降演算編集

nxyzとし

する[3]:p50

ある[3]:p50

クレブシュゴルダン係数編集

WuWvそれぞれ2u+1次元2+1次元複素計量ベクトル空間

ユニタリ表現として

ユニタリ表現なる限らないしかし適切基底取り替えれ以下事実成り立つ知らいる

クレブシュゴルダン分解という[3]:p59[9]:p116

左辺基底

形式記述できるここ固有値j1対応するDu固有状態ある一方右辺基底

形式記述できるここにおける固有値j対応するDw固有状態ある両者基底変換結ばれるので何らかの係数c(u,v,w,j1,j2,j)用い

書けるc(u,v,w,j1,j2,j)クレブシュゴルダン係数という[3]:p60-61

歴史編集

ナトリウムスペクトル観測する実験磁場おいD 2 分裂すること発見ゼーマン効果これ電子いまだ知らない 2 量子自由あるため考え1925ウーレンベックゴーズミット電子原子核周り公転する軌道運動電子質点なく大き持ちかつ電子自身自転いるないという仮説たて[10][11]この仮定その自転運動大きある自転回転方向異なるため公転伴う運動相互作用エネルギー 2 分裂考える実験結果うまく説明できそしてこの自由電子スピン運動呼ん

ただし実際この仮定通りスピン運動電子自転由来いる考える電子大き持ちかつ光速超える速度自転なけれならないことなりこれ特殊相対矛盾しまうそのため1925ラルフ・クローニッヒによって提案もののパウリによって否定パウリ自転そのもの考えなけれならない古典描像捨て一般運動 固有値として整数許されること注目この整数固有値スピン運動[12]

その後発展標準模型において電子大き 0 質点として扱っ実験高い精度矛盾なく電子内部構造あるスピン運動など内部自由起源あるわかっない

スピン統計編集

s 整数もつよう粒子フェルミ粒子ありs 整数とる粒子ボース粒子あること知らいるs 統計このよう関係相対量子によって説明できる

脚注編集

  1. ^ a b c ランダウリフシッツ教程
  2. ^ a b c d e f g h H13
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m A07
  4. ^ H13p383なおこのページにはではなくと書いてあるが が有限次元であるため両者は同一である(同ページDef17.21の直前の記述)
  5. ^ A07 pp. 3940なおA07内積定義いるこれパウリ行列貼ら空間に対してもののでこれsu(2)写す内積本節定義なる
  6. ^ a b c d e f g W16
  7. ^ H13 pp. 383384H13射影表現使っ定義いるのでこれスピンユニタリ表現読み替える必要ある
  8. ^ a b c d e S 12
  9. ^ W16
  10. ^ G.E. Uhlenbeck, S. Goudsmit (1925). Ersetzung der Hypothese vom unmechanischen Zwang durch eine Forderung bezüglich des inneren Verhaltens jedes einzelnen Elektrons. Naturwissenschaften 13 (47): 953954. doi:10.1007/BF01558878. 
  11. ^ G.E. Uhlenbeck, S. Goudsmit (1926). Spinning Electrons and the Structure of Spectra. Nature 117: 264265. doi:10.1038/117264a0. 
  12. ^ 砂川重信量子力学岩波書店1991ISBN 4000061399

関連項目編集

参考文献編集

  • [ランダウリフシッツ教程] L.D. ランダウE.M.リフシッツ井上健男 (2008610). ランダウリフシッツ物理教程 量子力学. ちく学芸文庫 
  • [A07] Joṥe Alvarado (2007年12月4日). Group Theoretical Aspects of Quantum Mechanics (pdf). 2016年12月1日
  • [H13] Brian C.Hall (2013/7/1). Quantum Theory for Mathematicians. Graduate Texts in Mathematics 267. Springer 
  • [S93] J. J. Sakurai (1993/9/10). Modern Quantum Mechanics, Revised Edition. Addison Wesley. ISBN 978-0201539295 
  • [S12] D. E. Soper (2012年1月30日). The rotation group and quantum mechanics (pdf). 2016年12月27日
  • [W16] Peter Woit (2016年12月6日). Quantum Theory, Groups and Representations:An Introduction (pdf). 2016年12月16日

外部リンク編集