難しい文章の特徴と処方箋としての多色ハイライト

Submitted by polymonyrks on Mon, 01/16/2023 - 10:24

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はじめに

【追記・お知らせ】

勉強会・読書会を計画しています。

 

 

当ブログでは、タップハイライト(多色ハイライト)を使うと難しい文章を楽に読めると主張してきました。

前々回は具体例について触れています。多色ハイライトはもともと特許文書に有効な技術です。

なので、特許文章(難しい文章、下記)の特徴を見ていきます。

 

特許文書 - 難しい文章

具体例

  第1配線層と、
  前記第1配線層を被覆する絶縁層と、
  前記絶縁層を厚さ方向に貫通して前記第1配線層の上面の一部を露出する開口部と、
  前記開口部内に形成されたビア配線と、
  前記ビア配線と電気的に接続されるとともに、前記絶縁層の上面に形成された第2配線層と、
  前記第2配線層の上面に形成された保護金属層と、
  前記保護金属層の上面に形成されたはんだ層と、
  前記保護金属層と前記はんだ層との界面に形成された金属間化合物層と、を有し、
  前記保護金属層は、前記第2配線層の側面よりも前記第2配線層の外方に突出する突出部を有し、
  前記はんだ層は、前記保護金属層の上面及び側面を被覆するとともに、前記第2配線層の側面を露出しており、
  前記金属間化合物層は、前記保護金属層の上面及び側面を被覆している端子構造。

 

このような文章です。とても難しいと感じませんか?

なぜ難しさを感じるか、一つは技術的に専門性の高い文章だから、です。

しかしこの記事ではそれ以外の原因を見ていきたいです。あることを重視すると専門家であっても読むのが難しくなります。

 

さて、特許業界では上記のような文章に多色ハイライトを施すことで楽に読んでいます。

逆に言うと、特許文章でなぜ多色ハイライトが有効か、それが分かれば同じ理由を抱える文章でも多色ハイライトが有効と推定されます。

 

・あることが原因で特許文書は難しくなっている

・特許文書で多色ハイライトが有効

・特許文書の特徴を抽出、それが難しさをもたらしていると確認(以下、この話)

・上記難しさと多色ハイライトとの親和性を議論(以下、この話も)

・特許文書と同じ特徴を持つ文書は多色ハイライトが有効と推定

 

以下では特許文章の特徴を概観し、その中で多色ハイライトとの親和性(相性のよさ)を持つのは何か、見ていきます。

 

特許文書が書かれる趣旨

特許をよく知らない人向けに、特許制度の趣旨についてかんたんにご説明します。

特許は発明の公表に対して与えられます。これは世の中に良いものを公表したことに対する対価としてです。

その発明を体現した製品や作り方が公表されるのは次の技術開発に繋がり社会にとっては良いことです。

しかし発明者側から見ると、公表することで真似されるというリスクを負います。

それを軽減するのが特許制度です。

特許として認められれば出願から20年間は他の人が発明と同じことをやるのを禁止できます。

 

特許文書の文章に求められること - 正確性

上の背景を踏まえた上で、なぜ正確性が求められるか

以下の2つの観点がありそうです。

 

1.発明(技術)が読んでる人に正確に伝わること

発明(技術)を公表する、これは読んだ人が技術を正確に理解できないと意味がないです。

 

2.禁止される範囲の明確化

他の人がその発明と同じことをやるのを禁止する、これは他の人にとってはデメリットです。

例えば、「何かすごい色鉛筆をつくること」、これではざっくりしすぎです。誰も色鉛筆を作れなくなってしまいます。

「複数の色を同じ鉛筆中に搭載していて、既に書かれた文章全体の色の分布を見て自動的に次の色が選択される鉛筆をつくること」、

これでもプロの観点では不十分ですが、先程よりは正確に限定できてるはずです。

 

正確性を重視した特許文書の特徴

上の2つの観点で冒頭の特許文書例を見てみます。再掲するとともに普通の日常語ならどうなるかも書いてみます。

 

日常語的文章

  配線と、
  それを被覆する絶縁体と、
  その絶縁層を縦方向に貫通して配線の上にある穴と、
  そこに形成されたビアと、
  それと接続され、絶縁層の上につくられた配線と、
  その上にある金属と、
  その上にあるはんだと、
  金属とはんだとの間にある化合物と、を有し、
  金属は、配線から飛び出していて、
  ハンダは金属の上と横を被覆し、配線の横を露出しており、
  化合物は、金属の上と横を被覆している端子構造。

 

特許的文章

  第1配線層と、
  前記第1配線層を被覆する絶縁層と、
  前記絶縁層を厚さ方向に貫通して前記第1配線層の上面の一部を露出する開口部と、
  前記開口部内に形成されたビア配線と、
  前記ビア配線と電気的に接続されるとともに、前記絶縁層の上面に形成された第2配線層と、
  前記第2配線層の上面に形成された保護金属層と、
  前記保護金属層の上面に形成されたはんだ層と、
  前記保護金属層と前記はんだ層との界面に形成された金属間化合物層と、を有し、
  前記保護金属層は、前記第2配線層の側面よりも前記第2配線層の外方に突出する突出部を有し、
  前記はんだ層は、前記保護金属層の上面及び側面を被覆するとともに、前記第2配線層の側面を露出しており、
  前記金属間化合物層は、前記保護金属層の上面及び側面を被覆している端子構造。

 

いかがでしょうか。下手すると上の日常的文章のほうが分かりやすいかもしれません。

しかし特許では下のように書きます。両者を比較してみます。

 

1.省略はしない(冗長)

・指示代名詞は使わない

・・日常語

それと接続され、絶縁層の上につくられた配線と、
  その上にある金属と、

・・特許

前記ビア配線と電気的に接続されるとともに、前記絶縁層の上面に形成された第2配線層と、
  前記第2配線層の上面に形成された保護金属層と、

 

まず日常語側で目立つのは「それ」「その」といった指示代名詞です。

前から順番に読んでいけば、指示代名詞で十分でかつ文章を短くできるので見通しが良くなります。

対照的に特許側はいちいち同じ言葉を反復しています。

しかし、上の「その上にある金属」の「その」は果たして絶縁層と配線のどちらを指すのでしょうか。

普通に読めばその業界の人間であれば配線の上と分かるのですが、不明確さは残ります。

不明確さを残すくらいなら多少わかりにくくても正確さと冗長さを特許文書は選びます。

更に初出の場合と既出を区別する徹底さも持っています(「前記」という表現)。

同じ名詞が2つ出てくるときは第一の、第二のといった具合に区別します。

 

2.言い換えはしない(表記の統一)

これは日常語でも心がけるべきですが「同じものは同じ表現」をします。

はんだと表現したら、ハンダとは書かず「はんだ」と必ず書きます。

当然、ソルダーという表現も使わないです。

 

3.違いを意識しやすい表現

日常側は敢えて不正確に書いたのですが、特許側は〇〇+層という単語が散見されます。

 ・ 第1配線層
 ・絶縁層
 ・第2配線層
 ・保護金属層
 ・はんだ層
 ・金属間化合物層

実際に層状になっているわけですが、シンメトリックな構図になっています。

なぜこのようなシンメトリックな構図を採るのでしょうか?

 

3.1.概念を説明すること(分かることは分けること)

少し脱線しますが、物事が分かるってのは分けることと思っています。

その際に、共通部分と共通でない部分を明確に分けると親切です。

言葉であれば

・共通部分(名詞)

・共通でない部分(形容詞)

で表されるのが普通です。先程の例では共通部分が「層」、で各種形容詞がそれを修飾しています。

上の例ではそれ以上の展開はありませんが、形容詞+名詞は更に名詞として扱われます。

これを続けると

 

(形容詞+(形容詞+(形容詞+(形容詞+名詞))))といった具合に無限に単語が長くなります。(※)

更に、形容詞の組み合わせによって単語が爆発します。

・理性的観念的概念

・感性的実体的事物

という単語が出てきたら、全パターンは2 * 2 * 2 = 8なのでその背後に6単語があるはずです。

 

 

(※)長くなると何か単語で置き換えされたりします。

これは正確でいいのですが注意深く読まないと??どういう意味だっけ?となってしまいます。

正確さを重視する文章であれば「前のほう」で必ずそれを定義しています。

しかし、どの場所にあるのか、それを探すのはひと手間で読書のテンポを損ないます。

読み戻りしたくなければ注意深く読む必要がありますが、先を読まないとわからない、

というのは初学者には往々にしてあると思います。

これもタップハイライトが解消してくれますが今回の趣旨と外れるので次回改めてご説明します。

 

 

まとめ(特許文書の特徴)

・省略しない

・同じ単語は同じ単語として表現

・形容詞+名詞による組み合わせ爆発

 

上の3つのコンボにより

・文章が長くなる

・同じ単語が非常に多くなる

 

これにより特許文書は難しくなっています。

次にこれら結果としての2つの特徴(デメリット)が多色ハイライトでどう解消されるかを見ます。

 

多色ハイライトによる解決

多色ハイライトした結果

まずは結果を見てほしいです。先程の特許文章に適用しました。併置します。

 

vanilla

 

withPPL++

(ボールド体については今は無視してください(別の機会にご説明します)。黄色の文字(ヒント語)も無視してください)

いかがでしょうか、正確になるために冗長になっていても問題ない、逆に見通しが良くなってたりもしませんか?

同じ単語を同じ色にしているだけですが、かなり効果的です。理由を考察します。

 

1.視野の拡大

まず、視野が拡大するのを確認してほしいです。

例えば二行目の三行目(前記絶縁層、、ビア配線と)の2行です。

ハイライトを施すと2行がひと目で把握できる一方で、白黒だと局所部分しか見えません。

見えない分を頭で記憶しておいたり、具体的な図を思い浮かべることで対応することになります。

ハイライトを使うと全然違う読み方が可能になります。

 

2.ワーキングメモリ負荷の軽減

ここからは観察するだけでなく、本気で先程の文章全体(白黒)を読んでみてください。

それからハイライト版を読んでほしいです。

白黒だと必死に前に何が書いてあるかを憶えておく必要があります。

同じ単語が羅列すること、視野が小さいことで更にその記憶が困難になります。

その一方でハイライト版だと多少読み過ごしてもまた戻ればいいや、という「余裕」が生まれます。

ワーキングメモリーが小さい人はそもそもこの手の文章は読めないですし、大きい人も負担が減ります。

また、同じ単語が羅列するのはむしろ利点になってきたりします。

つまりもし省略のために指示代名詞を使った場合は、その指示代名詞がどれを指すか、

前から注意深く読んで頭に記憶しないといけないです。

指示代名詞なし、省略なしとすることで逆にこれらパーツを広い視野を持って俯瞰的に余裕を持って読む、

読むだと1次元的なので眺めるといったほうが正解かもしれません。眺めることが可能となります。

 

まとめ(多色ハイライトによる解決)

以上まとめると、正確さを求めるがゆえのデメリットは、多色ハイライトにより以下のように解消されます。

 

・文章が長くなる(視野の拡大、ワーキングメモリ負荷の軽減で問題ない)

・同じ単語が非常に多くなる(逆にメリット化する。つまり俯瞰的視点で読める)

 

 【余談】

一応日常語バージョンも用意しました、以下に示します。

日常

こちらも案外成功しています(ちょっと想定外でした(笑))。指示代名詞の部分に曖昧さが多少残っているのがわかります。

指示代名詞を使わず前記〇〇と表現すれば「それ」が何かを読み解く必要は無いです。

 

記事全体のまとめ

冒頭に戻ると、以下を明らかにすることでした。

 

・特許文書の特徴を抽出、それが難しさをもたらしていると確認

・上記難しさと多色ハイライトとの親和性を議論

 

十分に議論できたと見ています。

なので特許文書と同様の特徴(正確さを重視)を有する文章でも同様に多色ハイライトが有効と思われます。

 

特許文書じゃない例

前々回に例示した「難しい文章」を眺めてみてください。

いずれも今回挙げた特徴(正確さ優先、同じ単語、長い文)が見えてくると思います。敢えてそういう文章を選んでいます。

そしてハイライトしてみてください。多分読みやすくなるはずです。

 

次回予告的なもの

本記事では難しい文章の特徴と多色ハイライトが互いにマッチすると見てきました。。

ただし多色ハイライトで多くの色が展開する状態にするのは結構大変だったりします。キーボードやフリック入力で単語検索するときを想像してください。

上の特許文書の例であれば、あれを8回やる必要があります。特許文書の場合はここでは割愛しますが特殊な事情があり、ハイライトする単語を都度設定する状況は少なかったりします。

しかし一般の文書でこれをやるにはちょっと手間です。次回はそのあたりをタップハイライトやボムハイライトがどう解決するか、見ていきます。

 

 

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